スマートフォン版へ

ホッカイドウ競馬の3歳3冠路線の第一弾「北斗盃」

  • 2020年05月21日(木) 18時00分

今年はいつになく寂しい7頭立て


 去る5月14日(木)、ホッカイドウ競馬の3歳3冠路線の第一弾である「北斗盃」が行なわれた。今年で第44回目を迎える伝統の一戦で、1着賞金は500万円。距離1600m内回りコースである。ただ、今年はいつになく寂しい頭数となり、エントリーしてきたのはわずか7頭であった。

 人気が集まったのは、7番アベニンドリーム(桑村真明騎手)で、これまで10戦2勝ながら、実績は明らかにこのメンバーの中では最上位である。前走の牡牛座特別(4月15日開幕日)でもビービーガニアンの2着と健闘しており、ここにきっちりと照準を合わせてきた。昨秋の北海道2歳優駿でもキメラヴェリテの2着と粘り、今回は圧倒的な1番人気(1.5倍)に支持されていた。

 2番人気は、メンバー中紅一点のレッドカード。昨秋にホッカイドウ競馬が閉幕した後、南関の川崎に遠征し2戦を消化、その後4月26日には水沢競馬場の「留守杯日高賞」に出走し2着に残っている。3番人気はタイセイシャイニー、4番人気以降はいずれも二桁の倍率であった。

 出走馬7頭というのは、2004年以来のことだ。各馬が返し馬を終えて、ゴール前1ハロンのスタート地点に集まって来る。発走時刻は20時35分。全馬スムーズにゲートに収まり、一斉に飛び出す。まず先手を取ったのはシンボ(松井伸也騎手)、それに1番人気アベニンドリームが並ぶ。6頭が固まった状態で2コーナーから向正面へと進む中、敢えて最後方で待機する作戦を採ったアッカレッツァーレ(服部茂史騎手)が1頭だけ他の6頭の集団を追走して行く。アベニンドリーム必勝のパターンかと思わせるようなレース展開であった。

 しかし、3〜4コーナーを回り、直線に向いた時、馬群から抜け出てきたのは2番人気のレッドカード(井上俊彦騎手)であった。失速気味に後退するアベニンドリームを置き去りにして、力強い脚色で内に粘るシンボを交わし、先頭に躍り出た。

生産地便り

北斗盃スタート直後アベニンドリーム、シンボが先手争い


 レッドカード圧勝かと思われた時、外側から爆発的な末脚でグングン伸びてきたのが、道中、最後方を進んで満を持していたアッカレッツァーレで、残り1ハロンでは、レッドカードにどんどん迫り、届くのではないかという勢いであった。

 内外にやや離れて2頭がほとんど並ぶようにゴール板を駆け抜け、辛うじてレッドカードがアッカレッツァーレをクビ差だけ退けてこのレースを制した。3着には内で粘ったシンボが入った。

生産地便り

北斗盃を制したレッドカード


 1番人気アベニンドリームは6着と大敗し、3番人気タイセイシャイニーは7着に終わった。7頭立てながら、馬番連単は5060円、3連複は9620円、3連単は47510円という高配当であった。

生産地便り

北斗盃口取り


 優勝したレッドカードは、父キンシャサノキセキ、母キューバンリズムII、母の父Kingmamboという血統の3歳鹿毛牝馬。林和弘厩舎の管理馬で、生産・馬主ともに(有)バンブー牧場。これで通算成績は11戦3勝2着3回、獲得賞金が1036万5000円となった。

生産地便り

井上俊彦騎手


 なお、同馬に騎乗していた井上俊彦騎手は、ホッカイドウ競馬における重賞勝利騎手の最年長記録を塗り替えた。井上騎手は、1965年(昭和40年)4月14日生まれで、この日は、満55歳と1ヶ月になっていた。初騎乗は1983年(昭和58年)4月18日。この日までで通算15602戦1950勝の成績を残している。

「久々の重賞勝ちで嬉しいです。ゲートで少し入れ込んでいましたが、レースになったら引っかかることなく、大丈夫でした。この馬は素直で砂も嫌がらないし、とても乗りやすい馬です。最高齢の記録に関してはちょっと恥ずかしいのですが、まぁ、嬉しいです。早くコロナウイルス感染が収まって、皆さんに競馬場で応援して頂けるようになると嬉しいですね」とレース後のインタビューでは快活にコメントしていた。

生産地便り

井上俊彦騎手インタビュー


 また林和弘調教師は「調子はまずまずでした。この馬は扱いやすい馬で、前がやや速くなって、良いポジションにつけて良い感じで回ってきてくれたので、良かったです。今、無観客で競馬をやっているんですが、早くファンの皆様に来場して頂けるようになると良いですね」と語った。

生産地便り

林和弘調教師インタビュー


 この日は5億1532万円余を売り上げたが、昨年の北斗盃当日(5月30日)は6億2313万円余を記録しており、1億円ほど数字が落ちたことになる。北斗盃単独では、昨年が14頭立てで1億9038万円、今年は1億5215万円である。今年は14日、昨年と比較すると半月ほどの違いがあり、全体的に出走頭数がまだ十分に揃わないことなどあって、単純には論じられないが、それにしても、わずか7頭というのは残念に思う。

生産地便り

インタビュー風景、三密を避けて実施


 ともあれ、レッドカードはこれで、ホッカイドウ競馬3歳3冠に挑戦する権利を獲得した。今後のレッドカードの走りに注目して行きたい。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング