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ディープインパクト産駒通算7頭目の弥生賞制覇

  • 2022年03月08日(火) 18時00分

先週の血統ピックアップ


・3/6 弥生賞ディープインパクト記念(GII・中山・芝2000m)
 2番手を追走したアスクビクターモアが4コーナーで先頭に立ち、ドウデュースの追撃をクビ差しのいで初の重賞タイトルを獲得しました。前半から引っ掛かり気味で、鞍上が抑えるのに苦労していたのですが、それでも最後まで垂れることなくしっかり伸びるあたり、高い能力を感じさせます。ディープインパクト産駒は通算7頭目の弥生賞制覇です。

 コロネーションS(英G1・芝8ハロン)、ロートシルト賞(仏G1・芝1600m)を勝ったケマー(父デインヒルダンサー)の半弟で、母カルティカは現役時代に芝2100mの仏G3で3着となりました。母の父レインボークエストは凱旋門賞馬。

 父ディープインパクトは、アメリカ血統の繁殖牝馬と相性がいいのですが、本馬は底力あふれる重厚なヨーロッパ血統で組み立てられています。フィエールマンやワールドプレミアに近いタイプといえるでしょう。距離延長は問題なく、3歳夏を越せばさらに強くなるはずです。

 ディープインパクト産駒はこの世代、コマンドライン、キラーアビリティに次ぐ3頭目の重賞勝ち馬となります。

・3/5 チューリップ賞(GII・阪神・芝1600m)

 中団を追走したナミュールが直線で外から突き抜けました。2歳女王を差しおいて1番人気に支持されたのは、前走、出遅れなければ阪神ジュベナイルフィリーズを勝っており、能力的には世代ナンバーワンだろう……というファンの見立てによるものですが、レースはその正しさを証明するものとなりました。

 直線で前が壁になり、進路を立て直す不利がありながら、楽々と突き抜けたレースぶりは圧巻でした。現3歳世代のハービンジャー産駒は、種付けの前年秋にディアドラ、モズカッチャン、ペルシアンナイトがGIを勝ち、種付けシーズンの最中にブラストワンピースが毎日杯を勝ってダービー有力候補となったため、前年よりも血統登録頭数が30頭増え、繁殖牝馬のレベルも急上昇したという背景があります。

 その結果、ナミュールの他にもプレサージュリフト(クイーンC)、リブースト(2戦2勝/怪我で戦線離脱中)、リューベック(若駒S)、アライバル(新潟2歳S-2着)など、素質馬がそろっています。母サンブルエミューズはブリーダーズCディスタフを勝ったマルシュロレーヌの半姉で、現役時代にフェアリーS(GIII)で3着と健闘しました。

 ナミュールにとってマルシュロレーヌは叔母にあたります。サンブルエミューズは繁殖牝馬として優秀で、他にファルコンSで3着となったヴェスターヴァルト(父ノヴェリスト)を産んでいます。母方に入るサンデーサイレンス、デピュティミニスターはいずれも父と相性良好。

 ナミュールと同じくこの2つの血を併せ持つハービンジャー産駒にはノームコア(香港C、ヴィクトリアマイル)がいます。スタートのミスがなければ同世代相手に崩れることはなさそうです。

今週の血統注目馬は?


・3/13 灘S(3勝クラス・阪神・ダ2000m)
 阪神ダ2000mに強い種牡馬はエスケンデレヤ。これまでに産駒が16回走って8回連対しています。連対率50.0%。同産駒はダートの長丁場で優秀な成績を挙げており、競馬場を問わずダート1900m以上で連対率30.2%。2012年以降、ダート1900m以上で産駒が50走以上した74頭の種牡馬のなかで第2位という優秀な成績です。

 当レースにはスズカデレヤが登録しています。20年6月に当コースで一度だけ走ったことがあり、4着と敗れていますが、このときは終始外を回らされる距離ロスが響きました。適性自体は高いはずなので上位争いに食い込めるでしょう。

今週の血統Tips


 現3歳世代がデビューしてから9ヵ月余りが経過し、世代上位の種牡馬勢力図が見えてきました。収得賞金2000万円以上に限定すると、最も産駒が多い種牡馬はディープインパクトで4頭(キラーアビリティ、アスクビクターモア、ジャスティンパレス、コマンドライン)。2位はハーツクライの3頭(ドウデュース、ダノンベルーガ、マテンロウレオ)、3位はダイワメジャー(セリフォス、マテンロウオリオン)とハービンジャー(ナミュール、プレサージュリフト)の2頭です。

 意外なことに、このところ活躍が著しいエピファネイア、キズナ、ドゥラメンテ、モーリスといった若手種牡馬は1頭〜0頭となっています。

 エピファネイアとキズナは3世代目ですが、たいていの種牡馬は3年目の産駒が底となります。スタッドインから丸2年が経過し、新鮮味や話題性が薄れることに加え、初年度産駒はまだデビューしていません。

 したがって、優れた繁殖牝馬が集まりづらいという傾向があります。サンデーサイレンスの3世代目は、全12世代のなかで重賞勝ち馬が最少で、クラシックを勝てませんでした。

 ただ、たいていの種牡馬はここから盛り返していきます。ディープインパクトは今年の2歳馬がわずか6頭しかいません。

 ハーツクライは2歳馬が130頭いますが、1歳馬は35頭で、当歳はいません。今後、種牡馬勢力図は否応なく変わっていきます。現在は新旧種牡馬の端境期で、両者のせめぎあいがおもしろいですね。

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netkeibaでもおなじみの血統評論家・栗山求氏が血統の面白さを初心者にもわかりやすくレクチャー。前週の振り返りや、週末行われるレースの血統的推し馬、豆知識などを通して解説していきます。 関連サイト:栗山求の血統BLOG

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