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種牡馬入りを発表したイクイノックス 夢の15冠配合は「配合構成が素晴らしい」

  • 2023年12月04日(月) 18時00分

血統で振り返るチャンピオンズC


【Pick Up】レモンポップ:1着

 初距離、大外枠という懸念材料が取りざたされましたが、これをものともせず、スケールの違いでライバルをねじ伏せました。

 父レモンドロップキッドはアメリカのクラシックレースのひとつベルモントS(G1・ダート12ハロン)を含めてG1を5勝。キングカメハメハやエルコンドルパサーと同じくキングマンボを父に持ちます。この系統は芝とダート、距離の長短に関して融通性があるのが特長で、キングカメハメハなどはその万能性を体現した種牡馬でした。レモンドロップキッドもよく似ており、たとえば代表産駒の一頭ビーチパトロール(本邦輸入種牡馬)は、現役時代に芝12ハロンの米G1ジョーハーシュターフクラシックを勝っています。

 父レモンドロップキッド、母の父ジャイアンツコーズウェイとも芝・ダート兼用タイプではありますが、レモンポップ自身は重心の低い筋骨隆々とした馬体なので、ダート向きの資質が表れています。2代母ハーピアは大種牡馬デインヒルの全妹。こうした血が入ることにより大レース向きの底力が補われているのでしょう。「父レモンドロップキッド、母の父ジャイアンツコーズウェイ、母方の奥にダンジグ」という配合構成は、アメリカでスピンスターS(G1・ダート9ハロン)を勝ったロマンティックヴィジョンと同じ。

 デルマソトガケやウシュバテソーロとの対戦が待たれます。

血統で振り返るステイヤーズS


【Pick Up】アイアンバローズ:1着

 オルフェーヴル産駒は、超長距離、ダート、道悪、といったタフな条件に強いという特長があります。

 芝3400mのダイヤモンドSと芝3600mのステイヤーズSでは、これまで計19戦して[4-4-2-9]。勝率21.1%、連対率42.1%、複勝率52.6%と驚異的な成績を挙げています。前者は東京、後者は中山と舞台は違うのですが、いずれも連対率40%以上。超長距離であればコースは問いません。

 ステイヤーズSは、20年のオセアグレイト(7番人気)、22年のシルヴァーソニック(3番人気)、そして今年(8番人気)と、3回目の制覇となります。21年にはアイアンバローズ自身が2着(4番人気)となっているので、4年連続で連対を果たしたことになります。人気薄でも馬券に絡んでくるため、馬券的にも頼りになります。ステイヤーズSにおけるオルフェーヴル産駒は、単勝回収率320%、複勝回収率163%。

 来年2月に行われるダイヤモンドSでも忘れずに狙いたい種牡馬です。

血統に関する疑問にズバリ回答!


「イクイノックスの種牡馬としての可能性は?」

 初年度の種付け料はまだ発表されていませんが、1800万円とも2000万円とも噂されています。いずれにしろディープインパクトが持つ初年度種牡馬の種付け料記録(1200万円)を抜くのは間違いないところでしょう。

 母の父キングヘイローは、近い世代に「ヘイロー、ドローン、サーアイヴァー」という、血統構成がよく似た3つの名血を抱えるという恐るべき配合です。ここから生じる活力が、ブルードメアサイアーとしての稀有な才能(ほかにピクシーナイト、ディープボンド、キングズソード、アサマノイタズラ、ドゥーラ、ウォーターナビレラなど多数の重賞勝ち馬を出す)の源泉だと思われます。

 イクイノックスの2代父ブラックタイド(ディープインパクトの全兄)も、近い世代に「ヘイロー、サーアイヴァー」を持ちます。

 つまり、イクイノックスの2代目に配置されたブラックタイドとキングヘイローは、血統構成の中核部分がよく似ており、この組み合わせがもたらす活力がイクイノックスの偉大な競走能力のベースとなっていると思われます。

 ヘイローは瞬発力の王者サンデーサイレンスの父、サーアイヴァーは抜群の切れ味を誇った芝血統、ドローンはダンシングブレーヴの母の父として有名で、同馬の桁違いの瞬発力はドローンの影響が大きかったと思われます。単に血統構成が似ているだけでなく、瞬発力を武器とした血であることが素晴らしく、ディープインパクトをはじめこれらを組み合わせたことにより誕生した馬たちは、最高度に洗練された芝血統としてわが国の競馬で存在感を示しています。

「ブラックタイド+キングヘイロー」からイクイノックスが誕生しましたが、ブラックタイドの全弟ディープインパクトのラインもキングヘイローと好相性を示しており、ディープボンド、ウォーターナビレラ、スマートクラージュなど多くの活躍馬が出ています。2歳の注目馬ガルサブランカもこのパターンです。

 イクイノックス産駒の配合を考えると、父の配合的核心部分であるサンデーサイレンス、ダンシングブレーヴなどのインブリードは上手くいくはずです。イクイノックスが父となった場合、サンデーサイレンスもダンシングブレーヴも4代前に後退するため、母方にこれらの血を持ってきてもまったく問題ありません。また、ミスタープロスペクターやロベルトを持たないので、わが国の主流血統、キングカメハメハやシンボリクリスエスといった血も歓迎でしょう。

 ディープインパクト牝馬に交配した場合、ブラックタイドとディープインパクトの全兄弟クロスが3×2で生じてしまいます。さすがにキツすぎるので避けたほうがいいでしょう。

 ディープインパクト牝馬を除き、交配しづらい血がほとんど存在しないので、幅広く良血の繁殖牝馬に交配することができます。馬体のサイズ、気性、脚もとに問題が起きそうにない、ということは大きな強調材料です。

 イクイノックスとアーモンドアイの組み合わせは、配合構成が素晴らしいのでぜひ見てみたいところです。母の父ロードカナロアはキングカメハメハ産駒。そしてサンデーサイレンス4×3。母のヌレイエフクロスを継続し、全体から受ける印象は重すぎず軽すぎず。好感が持てる配合です。

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netkeibaでもおなじみの血統評論家・栗山求氏が血統の面白さを初心者にもわかりやすくレクチャー。前週の振り返りや、週末行われるレースの血統的推し馬、豆知識などを通して解説していきます。 関連サイト:栗山求の血統BLOG

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