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異例の前半スローで逃げ切ったコーリンベリー/東京スプリント・大井

  • 2016年04月07日(木) 18時00分

(撮影:高橋正和)



めずらしい2F目の11秒台

 スタートで悲鳴が上がった。単勝1.4倍という断然人気のダノンレジェンドが出遅れた。予想で、「今回は内枠に入ったため出遅れるなどして馬群に包まれたときの心配はあるが……」と書いたが、その心配が現実のものとなってしまった形だ。タイミングが合わなかったのかダッシュもつかず、対照的に好スタートを切ってハナに立ったコーリンベリーとは、100mほど進んだところで7〜8馬身ほども差がついてしまった。1200m戦ではさすがに致命的な出遅れだった。

 コーリンベリーはそれでレースを楽に運ぶことができた。前半3Fのラップは、12.6 - 11.5 - 11.6で、35秒7というもの。短距離戦では、スタートしてスピードに乗る2F目のラップはほとんどの場合10秒台になるが、それが11秒5というのはめずらしい。中央との交流となった2009年以降の東京スプリント、さらには過去10年に行われた東京盃と大井開催のJBCスプリントまで調べてみたが、もれなく2F目のラップは10秒台を記録している。そして前半3Fの通過は33秒台か34秒台で、もっとも遅かった時でも34秒7。コーリンベリーが前半に踏んだラップは、2F目の1秒遅いぶんが、そのまま前半の35秒7という異例に遅いペースとなった。そして上り3Fも前半とまったく同じ35秒7。同じく過去の東京スプリント、10年以内の東京盃、大井のJBCスプリントを見ると、すべて前半3Fのラップが速く、しかも少なくとも1秒3以上の差があった。前後半のラップを見ても、コーリンベリーの前半のペースがいかに楽だったかがわかる。

 松山弘平騎手はスタートして100mほどのところでうしろを振り返っているが、外枠からの発走だったため、先頭に立って内に進路をとるときに、内から何か来ないか確認したということはあっただろうが、同時に「ダノンレジェンドはどこに?」とも思ったのではないだろうか。

 ちなみに南関東限定の1200mの重賞・アフター5スター賞の過去10年のラップも見てみたが、2F目のラップが11秒0というのが2012年に一度だけあり、それにしても前半34秒7、後半37秒0という、やや上りはかかったものの全体的には普通の流れだった。

 コーリンベリーの目標はJBCスプリント連覇とのことで、今年は川崎1400mが舞台となるだけに、今後は1200mはできるだけ避けて1400mを中心に使っていきたいとの小野次郎調教師の話だった。ひとまず次走には、今回と同じ別定2kg増(昨年の別定条件が変わってなければ)というJpnIIのさきたま杯を予定しているとのこと。しかし問題はその後で、ダート短距離路線でGI/JpnIを“勝ってしまった”馬のその後はレースの選択がなかなかに難しい。JpnIIIの別定条件には4kg増、5kg増というレースが多く、またハンデ戦でも同じこと。JBCスプリントのトライアルとなっているJpnIIの東京盃はGI/JpnI勝ち馬でも2kg増ではあるものの1200m戦。いっそのこと、今回も前走がフェブラリーSだったように、JBCスプリントの前哨戦として、JpnIで定量のマイルチャンピオンシップ南部杯を使うという手はあると思うのだが、どうだろう。

 2着には3番手を追走したグレープブランデーが流れこんだ。昨年のこのレースが初めての1200m戦となっての4着で、今回はそれ以来の2度目。昨年一度経験して、さらに2走前には、前半3F通過が34秒6という根岸Sで3着に好走という経験もプラスになっただろう。しかし何より今回の1200m戦らしからぬ前半のペースは、マイル以上でしか勝ち星がないこの馬には味方となったはず。

 メンバー中最速の35秒4で後半を上がったダノンレジェンドがなんとか3着に入った。昨年、やはり3着に敗れた北海道スプリントCと同じようなレースだった。そのときは出遅れてはいなかったのだが、馬群の中で揉まれたことで前半はまったく流れに乗れなかった。もしかしてゲートを出て一完歩目で砂を被ると、もうそこでレースを止めてしまうということはあるのかもしれない。それでもレースをあきらめることなく、直線ではしっかり脚を伸ばしてくるのがこの馬の強さなのだろう。互角のスタートを切ってコーリンベリーをマークする位置につけていれば、おそらく前半35秒7という楽なペースにはならなかったはず。引き続き、JBCスプリントに向けて最有力の1頭であることは変わらない。

 2番人気に支持されながら4着だったブルドッグボスの評価は難しい。グレープブランデーとほぼ並走するような位置を進んだが、直線では伸びが見られず。ダート1200mのオープン2連勝のレースぶりからすると物足りない内容だ。地方の馬場が合わなかったのか、それとも何か別の要因があったのか。近1年で4勝という近走の賞金なら、また地方のダートグレードに出走できるチャンスもあるだろう。

 地方馬は単勝が200倍以上というなかで、最先着の5着はルックスザットキル。これまで中央馬相手の2戦はともに二桁着順だったが、今回は前述のとおりの前半のペースだったゆえ、直線を向くまで楽に2番手を追走できた。そのまま3着くらいには粘るかという勢いもあったが、例によって残り200mのあたりでばったり。この馬の適距離はやはり1000m以下なのだろう。

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1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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