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育成調教技術者養成研修第33期生修了式

  • 2016年04月20日(水) 18時00分
育成調教技術者養成研修第33期生

育成調教技術者養成研修第33期生


晴れて4月15日(金)に修了式を迎えた第33期生

 昨春、BTCの育成調教技術者養成研修に入講した第33期生17名が、晴れて4月15日(金)に修了式を迎えた。

 昨年までの北馬場とは異なり、今年は、BTCの育成調技術者研修施設内にある800m調教馬場にて、まず午前10時より実技査閲が行なわれた。11日のJRA日高育成牧場での育成馬展示会には、17名中13名しか騎乗していなかったが、この日は全員が揃って訓練馬に騎乗し、2班に分かれての速歩、キャンター、そして最後は、2頭ずつ併走で駈歩と移行し、集まった保護者や就職先の各育成牧場関係者などの前で1年間の訓練の成果を披露した。

育成調教技術者養成研修33期生修了式

育成調教技術者養成研修33期生修了式



 この日は、晴れていたものの、11日同様に風がやや強く、体感温度もひじょうに低く感じるコンディションとなったが、17名は元気いっぱいに乗り慣れた訓練馬を操り、教官の指示通りのメニューを消化して、無事に実技査閲を終えた。

育成調教技術者養成研修33期生修了式

実技査閲風景・その1


育成調教技術者養成研修33期生修了式

実技査閲風景・その2



 その後は、会場をBTC内診療所二階の会議室に移して、修了式が行われ、大平俊明・BTC理事長から1人ずつに修了証書と記念ゼッケン、1年間の訓練の様子を収録したDVDが授与された。

育成調教技術者養成研修33期生修了式

大平BTC理事長より修了証書を授与される研修生



 次に来賓の山口修二・日高振興局長、池田拓・浦河町長、平賀敦・JRA日高育成牧場場長よりそれぞれ心のこもった祝辞が贈られ、最後に17名を代表して小竹将貴君(23歳、北海道出身)が、「昨春以来、この研修所で1年間を過ごし、馬に関する知識と技術を学ぶ過程で、喜びも悲しみも経験でき、大きく成長することができました。私たちを指導して下さった教官や訓練馬たち、その他全ての関係者の方々に深く感謝する次第です。私たちは今日、修了式を迎えましたが、これが最終目標ではなく、立派なホースマンになるために日々努力して行く所存です」と謝辞を述べた。

育成調教技術者養成研修33期生修了式

17名を代表して謝辞を述べた小竹将貴君



 4月に始まり、翌年の4月で研修を終えるこの養成制度は、1年間を通じて、447時限に及ぶ騎乗訓練をこなし、その他実技や学科と、スケジュールがぎっしり組まれている。8月には民間の牧場実習が入ってくるし、9月からは、交代でJRA日高育成牧場へ馴致実習にも出かけ、ドライビングやロンジングなどの初期馴致を学ぶ。その後は、年明けより、それらJRA育成馬に実際に騎乗して、坂路調教などにもチャレンジするメニューが加わる。まさしく、「馬漬け」の1年間を送るのである。

 とはいえ、厳しさの中にも数々のレクレーションや行事が行われ、アポイ登山、襟裳岬見学、魚釣り大会、餅つき大会、スキー授業、中央競馬(札幌)、ホッカイドウ競馬やばんえい競馬見学などにも出かけており、厳しい訓練一辺倒というわけでもない。また夏期と冬期それぞれに数日間の休暇も与えられる。

 入講当初は、馬に乗れないどころか触ったこともなかったような若者が、曲がりなりにも1年後には全員が訓練馬に跨り、駈歩をこなせるまで成長するのだから、ひじょうに効率よく研修が行われていると言えるだろう。

育成調教技術者養成研修33期生修了式

実技査閲風景・その3



 当然のことながら、ここの修了生は引く手あまたで、就職率は毎年100%を誇る。因みに今年の33期生たちの就職先は以下の通りだ。社台ファーム(2人)、小国ステーブル(2人)、エクワインレーシング(2人)、坂東牧場、追分ファーム、下河辺牧場、ビッグレッドファーム、コスモヴューファームなどの知られた大手の名前が並ぶ。また地元浦河では、吉澤ステーブル、ヒダカファーム、愛知ステーブル、山崎ステーブルといったところの名前もある。女性2人を含む17名は、この後すぐにそれぞれの就職先へと向かい、今後は育成現場で働くことになる。

 人材不足が深刻化しつつある生産地では、馬に携わる仕事に就きたいという若者をどうやって受け入れるか、未経験の若者にいかに知識と技術を習得してもらうかが常に大きな問題として立ちはだかる。そうした人材教育を施すためのひとつの手段として、この研修所が存在しているわけだが、実際のところ需要と供給のバランスがとれていないのが現状だ。人材を求める牧場は、生産も育成も数多く存在するが、馬の仕事を目指す、意欲ある若者の絶対数が年々減ってきていると言われている。外国人の労働力に頼るのも限界があり、やはり本音としては、どの牧場でも「日本人のしっかりした若者が欲しい」と口をそろえる。しかし、そういう有為な人材ほど、例えばJRA競馬学校を経て厩務員になったり、または旺盛な独立心を発揮して自分の牧場を開設したり、あるいは海外へ武者修行に出かけたりというケースもある。

育成調教技術者養成研修33期生修了式

修了式後の記念撮影



 競馬を底辺の部分で下支えするのが生産地の生産と育成の現場である。多くの人々にとってこの業界で働くことが憧れになるような状態が理想なのだが。もう少し女性が増えてくれば、また雰囲気もかなり変わって来そうに感じる。男だけの現場は、どうしても殺伐としたムードになりがちで、華やかさに欠ける。藤田菜七子騎手がどこにいっても大人気なのは、可愛い顔をしていて初々しいのと同時に、JRAで唯一の現役女性騎手だからである。せめて、2割〜3割程度も女性が働いていると、かなり変わるはずだ。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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