(写真提供:岩手県競馬組合)
◆まさにスゴイものを見せられた
「強ぇ!」。グリーンチャンネルの中継を見ていて、直線の坂で思わず口をついてしまった。
もちろんダノンレジェンドだ。後続を一瞬のうちに置き去りにした瞬発力。後半3Fが34秒1で、走破タイムの1分9秒1は、2010年のこのレースでサマーウインドが出したコースレコードにコンマ2秒と迫るもの。それが経験ずみの57〜58kg程度の負担重量なら、「ああ、やっぱりね」という感想だったと思うのだが、何しろこのレースの別定重量として設定された上限の60kgを背負ってのパフォーマンスとしては、まさにスゴイものを見せられた。
とはいえ楽な流れではあった。抜群のスタートを切ったラブバレットと馬体を併せ、互いに首が出たり入ったりしながら先行した前半3Fの通過は35秒0。NARのデータベースで上りタイムを確認できる、2009年以降のクラスターCと、同じ舞台の2014年JBCスプリントのタイムを見ると、後半3Fのタイムが前半3Fのタイムより速かったことは一度もない。もっとも近かったものでも2014年クラスターCの前半34秒8、後半34秒9というもの。同じコーナー2つの1200m戦では、さらにレベルが高い大井の東京盃ともなるとその傾向はさらに顕著。過去10年の東京盃、さらにその間に大井で行われたJBCスプリントのタイムを見ると、もっとも前後半のタイムが近かったときでも後半が1秒5遅く、おおむね2〜3秒の差がある。
今回のクラスターCは、ラブバレットでも4コーナーまで手ごたえ十分だったという前半のペースは、1200m戦にしてはそれほど楽だった。何が何でもハナに行くという馬がいないメンバーだったがゆえの前半異例のスローペースだが、たとえばコーリンベリーのようにビュンビュン飛ばしていく馬がいたら、果たして60kgのダノンレジェンドは同じようなパフォーマンスを見せられたかどうか。それにしても単純に6kg以上の斤量差があるメンバーをまったく問題にしなかったというだけでスゴイことなのだが。
これまでクラスターCには、JBCスプリントを制したサマーウインドやタイセイレジェンドが60kgを背負って出ているが、ともに掲示板外。それを考えると、GI/JpnIを勝っていないダノンレジェンドが60kgを背負っての勝利は、それらのJpnI馬を超えるパフォーマンスとも言える。昨年勝てなかった短距離唯一のJpnIであるJBCスプリントはぜひとも勝ってほしいところ。
2着のブルドッグボスは、スタート後は3番手も行く馬を行かせて前半は5番手に控えての追走。直線を向いて外に持ち出し、ラブバレットをとらえて4馬身突き放すという正攻法の強いレース内容。しかし今回はさらにその2馬身前にダノンレジェンドがいた。前走かきつばた記念が、直線完全に抜け出したところを外からノボバカラに差し切られての2着。いずれもJpnIIIなら勝っていてもおかしくないレベルのパフォーマンスは見せている。
4コーナーでも手ごたえ抜群で、ひょっとすると、と思わせたラブバレットだが、さすがに前2頭とは瞬発力の差があった。これでダートグレードは、JpnIIのさきたま杯で4着があり、地元のクラスターCは2年連続で3着。グレードを勝ち切るにはもう一段階のパワーアップが必要かもしれない。
今回は勝ったダノンレジェンドのパフォーマンスが際立っていたため、4着以下の中央馬のレースぶりはまったく目立たないものになった。