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北海道トレーニングセール・後篇

  • 2017年05月31日(水) 18時00分


木村貢組合長「予想以上の好結果に満足」


 一週間経ち日本ダービーも終わってやや時期を逸したような感もあるが、もう一度、トレーニングセールについて書かせて頂く。

 5月23日(火)も、前日と同様に終日曇ったままの風の強い日となった。比較展示はなく、チェックしたい馬はそれぞれが厩舎地区に直接赴き、直接そこで見学するようになっている。そのため、セリ開始時間も早く、午前9時半とされていた。

 セリ会場は、競馬場内のファンファーレホールに設けられており、上場馬は厩舎地区からパドックまでやってきて、セリ会場の外で待機するという動線だ。競馬開催時には出走馬が周回するパドックを、上場馬が回るという図である。会場の中に入らずに、外で丹念に歩様をチェックしては、会場外から目当ての馬を競る購買者も少なくない。

 日高軽種馬農協の木村貢組合長が冒頭にあいさつし、定刻通りにセリが始まった。上場馬が登場すると、前日の公開調教時のVTRがダイジェストで流れ、走破タイムが表示される。セリ上げは、お台付け方式である。

 開始直後はいつものようにやや低調な滑り出しであったが、その後、順番が進むにつれて徐々に勢いを取り戻し、活発な競り合いが展開されるようになった。

 ここでも、前日の公開調教での走りが評価を左右することになり、走破タイムそのものもさることながら、一杯に追われてやっと出した時計か、馬なりで余裕を残した走りかで、大きく評価を分ける結果になった。また、併走での公開調教でも、ほぼ並んでゴールする組もあれば、前後に大きく差が広がってしまうケースもあり、そういう場合は先着した馬の方がより高くなる傾向が見られた。

 セリは長丁場なので、購買者にとっては、じっとセリ会場の椅子に座ったままでいるのは辛いものがある。今回のトレーニングセールでも、最初のうちこそ会場内の椅子はほぼ埋まっていたが、徐々に人々が動き出し、入れ替わる光景がずいぶん見られた。日高のセリでもそうだが、目当ての馬の時だけはセリに参加するために会場入りするが、そうでない時にはどこかでゆっくりと休みたいわけで、いかに購買者に居心地の良い空間、場所を提供できるかがひとつのポイントになる。

 札幌競馬場は、あちこちに腰を下ろせる場所が確保されていたので、その点ではずいぶん恵まれていた。やや寒くはあったが、外のスタンドはガラ空きだったし、内部にもあちこちに休憩できる場所が用意されていた。競馬場のキャパの大きさに助けられた形であった。

 セリは中盤を過ぎた頃にピークを迎え、134番クスノステファニーの27(父アドマイヤムーン、牡)が3132万円(税込、税抜き価格2900万円)で鹿児島・谷口屯氏に落札されたのに続いて、147番ダイイチボタンの2015(父ディープブリランテ、牡)がそれを上回る3240万円(税込、税抜き価格3000万円)で落札され一気に今回の落札価格レコードを更新した。

高額落札馬第3位134番の落札場面

高額落札馬第3位134番の落札場面

134番立ち写真

134番立ち写真

高額落札馬第2位147番の落札場面

高額落札馬第2位147番の落札場面

147番立ち写真

147番立ち写真

 しかし、今回は最後に、231番トーコーユズキの2015(父ハードスパン、牡)が登場すると、瞬く間に価格が急上昇して、5508万円(税込、税抜き価格5100万円)まで競り上がった。前日の第1クルー16組目に公開調教を行なった同馬は、岩橋勇二騎手(道営)を背に11.00秒、11.08秒の計22.08秒をマークし、2ハロンを通じての最速タイムをたたき出したことで、大きく注目されていた。浦河・(有)辻牧場が販売申込者で、飼養者は(有)吉澤ステーブル。落札者は香港のYEUNG KIN MAN氏。

最高落札価格馬231番の落札の瞬間

最高落札価格馬231番の落札場面

231番立ち写真

231番立ち写真

 これら3頭が、落札価格上位馬3傑であった。

 また牝馬の最高価格馬は、168番コッコレの2015(父ハードスパン)で、2268万円(税込、税抜き価格2100万円)。浦河・(有)グランデファームが販売申込者、落札者はノーザンファームである。

牝馬最高価格馬168番落札場面

牝馬最高価格馬168番落札場面

168番立ち写真

168番立ち写真

 208頭中155頭が落札され、総額12億8509万2000円、前年比1億6600万円の売り上げ増、そして売却率もまた前年から11.45ポイント増の74.52%と、3年前の74.86%にはわずか届かなかったものの、総額は8年連続のレコードを更新する上々の結果に終わった。平均価格829万916円も過去10年で最も高い数字であった。

 セリを振り返り、木村貢組合長は「頭数が昨年よりやや少なかったので、昨年並みの数字に近づいてくれたら良いと思っていましたが、予想以上の好結果に満足しています」と語り、「ただ、購買者登録数が昨年よりも99人増え604人に達したことで、サービス面で行き届かない点があったのは事実。今後の反省材料にしたいですね」と結んだ。

木村貢組合長

木村貢組合長

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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