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全国馬名簿から見えてくるもの

  • 2017年12月13日(水) 18時00分
全国馬名簿



この10年で生産頭数が激増したノーザンファーム


 このほど日本軽種馬協会の発行による「2017年生産・全国馬名簿」が届いた。これは本年度、日本軽種馬協会(以下JBBA)の会員より報告のあった産駒について、各地域の軽種馬農協(日高、胆振、青森等々)及び軽種馬協会がとりまとめたデータをもとにJBBA(軽種馬改良情報システム)が作成したものである。

 したがって、JBBAに加入していない牧場で生まれた産駒や、本年11月12日時点までに届け出のなかった産駒については未記載となっている。我が国においては、当該産駒が1歳12月末日までに登録できる猶予期間が設定されているので、この名簿に記載されている産駒が全てとは言い難いものの、ほとんどの生産馬はこれに載っていると考えて差し支えない。

 この名簿には全国で今年生産されたサラブレッドが計6547頭掲載されており、内訳は日高が5126頭(牡2618頭、牝2508頭)、胆振993頭(牡499頭、牝494頭)十勝19頭(牡11頭、牝8頭)、東北84頭(牡42頭、牝42頭)、関東276頭(牡147頭、牝129頭)、九州49頭(牡23頭、牝26頭)となっている。

 因みに10年前の2007年に発行された同名簿によれば、全国で7221頭が生産され、日高5685頭、胆振846頭、十勝22頭、東北184頭、関東372頭、九州102頭、支部外10頭という内訳である。

 この名簿上での比較では、10年間で674頭の減少になるが、胆振管内だけは着実に生産頭数を伸ばしており、それ以外は全地域で生産頭数が右肩下がりで減り続けてきている計算だ。なお、関東地区の276頭中、253頭が社台ファームの生産馬で、10年前も今年もこの関東地区での記載になっている。その他、社台ブラッドメア名義で114頭が胆振に記載されているので、合わせて367頭が社台ファーム生産馬ということになるだろう。

 また、社台コーポレーション白老ファームは111頭の生産頭数、そして追分ファームは66頭の生産頭数である。それぞれ10年前と比較すると、白老ファームは-10頭、追分ファームは+17頭となり、それほど大きな変動は見られない。

 だが、ノーザンファームは、この10年で一気に生産頭数が激増した。2007年の時点では、ノーザンレーシング名義の1頭を含め、ノーザンファーム生産馬は308頭にすぎなかったが、今年の名簿には、509頭の名前が記載されており、実に200頭もの増加となっている。

 しかも、母系の血統欄や摘要欄にある産駒成績を見ると、ゴシック体で記載された馬名の多いことが見て取れる。もちろん、父欄にある種牡馬のラインナップも圧倒的な水準の高さである。

 例えばディープインパクト産駒は、ノーザンファームだけで61頭もの頭数になる。そしてキングカメハメハ30頭、ハーツクライ32頭、ルーラーシップ36頭、ロードカナロア35頭、オルフェーヴル22頭等々、社台スタリオン繋養の一流種牡馬がずらりと並ぶ。

 ノーザンファームは今年すでに中央の重賞を50レースも制しており、勝ち鞍数でも現時点で569勝を挙げている。残すところ開催日数で12日(中山、阪神各5日、中京2日)となったが、重賞もまだ6レースが残っており、昨年の記録(589勝、重賞51勝)を更新することはまず確実であろう。

 競馬の世界では、ノーザンファームを筆頭に社台ファーム、白老ファーム、追分ファームがいわゆる「社台グループ」と称され、これら4牧場の合計頭数は1053頭になるが、割合としては全国の生産頭数6547頭の16%でしかない。しかし、今年は今の時点ですでに4牧場で1007勝を挙げており、ほとんど生産頭数と並ぶほどの勢いである。年間のレース数は288日×12レースで最大3456レースだから、残り12日分の144レースを除いてざっくり計算すると30%がグループの勝ち鞍になる。この割合が重賞、そしてG1レースになるとさらに高くなることは言うまでもない。

 競馬は長らく「社台VS日高」という構図の力関係で語られていたが、ことG1に関してはほぼその図式が崩れてしまったことは周知の通りだ。来年以降、日高産馬の巻き返しに期待したいところだが…。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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