スマートフォン版へ

日本一遅い“ダービー”

  • 2017年12月27日(水) 18時00分
【年末年始の更新スケジュール】
 今年の更新は本日分で終了です。年始は3日が休載、10日が初回の更新となる予定です。


盛況したが「ダービー効果」ではなく「有馬記念効果」


 中山競馬場で有馬記念が行われてから4時間近く経った午後7時5分。帯広競馬場で3歳チャンピオンを決める「第46回ばんえいダービー」がスタートを切った。この時期の帯広は、いつもならば日没とともに気温が急降下して文字通り凍てつく極寒の気候になるが、今年は折からの低気圧接近によって、ひじょうに暖かく穏やかな夜を迎えていた。

 ばんえい競馬でもダービーは行なわれる。もちろん日本で最も遅い時期に開催されるダービーだ。1着賞金150万円。北海道知事賞、全国公営競馬主催者協議会会長賞が副賞、そして帯広市から生産者賞が別途1着で40万円、2着20万円、3着10万円がそれぞれの生産者に交付される。

 人気は5番ナカゼンガキタ(西将太騎手)が牝馬ながら1番人気。続いて2番人気は8番メジロゴーリキ(長澤幸太騎手)、3番人気は10番ミノルシャープ(阿部武臣騎手)となっている。熱心なファンがエキサイトゾーンの前に並んで観戦する中、ゲートが開いて各馬が一斉に飛び出した。

2番人気、長澤幸太騎手のメジロゴーリキ

2番人気、長澤幸太騎手のメジロゴーリキ

 ほぼ横一線で難なく第1障害を越え、各馬が第2障害の前に次々に集まってきて並ぶ。息を整え、騎手の合図とともにまずナカゼンガキタとメジロゴーリキがほとんど同時に第2障害を上がって行く。しかし、頂上でナカゼンガキタがガクッと膝をついてしまい、わずかにタイムをロスする。その外側から力強い脚色でメジロゴーリキが一気に第2障害を越え真っ先に坂を下ってくる。続いて、すぐに立て直したナカゼンガキタが追走する。

 ほどなく9番シンエイボブ、7番コウシュハサマーも坂を下る。メジロゴーリキがリードし、ナカゼンガキタが続く展開だが、その間を縫って猛然と6番ホクショウムゲンが追い上げてきて、ナカゼンガキタを交わし、メジロゴーリキに迫るほどの勢いだ。

 しかし、メジロゴーリキは一度も止まることなく、長澤幸太騎手がそのまま追い続けて先頭でゴール板を通過した。そして、2着には名手の鈴木恵介騎手の手綱さばきに操られたホクショウムゲンが続くと思われたが、ゴール間際で馬が立ち止まり、一息入れている間に3番マツカゼウンカイ(藤本匠騎手)と2番ジェイワン(藤野俊一騎手)が強襲して、ほとんど並ぶようにゴールした。2着には9番人気のマツカゼウンカイが入り、僅差の3着がジェイワンという順での入線で、馬番連勝単式は11030円の高配当となった。

優勝したメジロゴーリキ

優勝したメジロゴーリキ

一度も止まることなくゴール板を通過した

一度も止まることなくゴール板を通過した

 ホクショウムゲンはジェイワンから7秒遅れて4着でゴールイン。また1番人気のナカゼンガキタは、最後に失速して7着に敗退した。

 勝ったメジロゴーリキは、父ニシキダイジン、母メジロルビーという血統の牡3歳鹿毛。

 馬主は広瀬豪氏。生産者は幕別町・佐渡孝徳氏。岡田定一厩舎の管理馬で、長澤幸太騎手が騎乗。岡田師、長澤騎手ともに、このレースは初勝利である。

岡田師、長澤騎手(写真)ともに、このレースは初勝利

岡田師、長澤騎手(写真)ともに、このレースは初勝利

 これでメジロゴーリキは通算成績が47戦13勝2着11回となった。因みに収得賞金は、このキャリアながら399万8000円でしかなく、改めてばんえい競馬の賞金水準の低さを思い知らされる数字ではある。

この勝利で通算13勝となったメジロゴーリキ

この勝利で通算13勝となったメジロゴーリキ

 ただ、この日、帯広競馬場には、実に3391人ものファンが入場し、2億3778万円を売り上げた。「ダービー効果」というよりは、土日に併売している中央競馬の「有馬記念効果」によるところが大きい。それでも、中央の馬券を買いに来場した人々の一部でもばんえいの馬券を「ついでに」買って居残ってもらえるのならばそれで良しとしなければなるまい。

 全国的に今年は地方競馬の売り上げがひじょうに好調に推移しているが、ばんえい競馬も例外ではなく、新年度の始まった今年4月以来、先月末までの数字を見ると、入場人員が1日平均で2148人、前年比108.4%、売り上げも1日平均1億3445万円、前年比134.7%と高知競馬に次ぐ伸び率を記録している。

 とりわけ好調なのがネット、電話投票で、前年比149.4%、全体の78.43%を占める。本場の入場人員がそのまま売り上げに反映しないのは、前述のように土日の中央発売も並行して実施しているからで、因みにばんえいダービー翌日の25日(月)の入場人員はわずか643人にとどまったものの、売り上げは1億8983万円に達し、場外発売、とりわけネットや電話投票に大きく支えられていることがこの数字からも窺える。

 いつまでこの好調が持続するかは予測できないが、少なくとも今年の売り上げ水準ならば、来季は賞金の大幅増額も可能であろう。ダービーの行なわれた24日に実施された他のレースは、大半が1着賞金が10〜12万円程度で、しかも3歳以上のレースでは4着までしか賞金が交付されない。賞金が回りまわって生産に還元されることで、初めてばんえい競馬が成立する。一定の生産頭数を確保するためにも、賞金の大幅増額は急務だろう。

このコラムの通知を受け取りますか?

お気に入り

このコラムの通知を受け取りますか?

お気に入り

すでにお気に入りに登録しています。

登録済

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング