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青森のセリ市はかなり狙い目

  • 2011年07月06日(水) 18時00分
 7月5日に行われた門別競馬の栄冠賞で、青森県出身のウィードパワーが勝利した。レベルの高い道営競馬の2歳戦は、北海道で生まれて育成された馬たちがほとんどという舞台。そこで青森産馬が結果を出すのはけっこう難しいように感じるから、なおさら快挙といえるかもしれない。

 ちなみに、06年に道営でデビューしてJRAのラベンダー賞を勝利したインパーフェクトも青森県生まれ。その馬とウィードパワーに共通していることは、

・取引されたのは北海道のセリ市場
・購買者は大規模育成者

 ということ。インパーフェクトはビッグレッドファームで鍛えられ、ウィードパワーは浦河のBTCで鍛えられた馬である。

 しかしまあ、そのウィードパワー。昨年7月に開催された八戸市場では買い手がつかなかった馬なのだ。

 仕方ないから8月に行われた静内のサマーセールに上場を申し込んで、それでようやく100万円(税抜き・以下同様)で落札となったわけだ。セリ市に1000頭ほども登場してくるサマーセールでこの馬をチョイスできた落札者の相馬眼には敬意を払わなければならないが、逆に言うと八戸市場でこの馬を買えるチャンスは、ものすごくあったということになる。

 毎年の八戸市場の様子を見ていて思うのは、「値段の割にいい馬が出ている」ということ。たとえば2009年の南関東S3・ローレル賞(川崎)を制したキョウエイトリガーも、ウィードパワーと同じように八戸市場では買い手がつかなくて、北海道のサマーセールに転戦して取引成立となった馬なのだ。

 売れ残った馬でもそれだけの実績を残せるのだから、売れた馬ならなおのこと。G2を2勝したマイネレーツェル(取引価格200万円)という大駒も登場するのだから、全体的に過小評価されていると言ってもいいかもしれない。

 とはいえ、歴代の市場における種牡馬のラインナップをみると微妙なのは確か。10年近く前には、シャマードシンボリ産駒とかハナセール産駒などが登場していた。かつては白毛馬のハクホウクンの全弟(父ハクタイユー・母はアラブのウインドアポロッサ)が、栗毛で登場したこともあったし……。

八戸市場

 ちなみに今年のメンバーにも、エスプリシーズやカームといった、地方競馬で活躍した種牡馬がノミネートされている。しかしそれは圧倒的に少数。ざっと見た印象では、北海道のセリ市とそんなに変わらない感じがする。ずいぶん変わったものだなあと、ちょっとした感慨を覚えるほどだ。

 だってつい3年前のセリ市には、埼玉新聞杯を制したキングリファール産駒とか、JRAで4勝したユメノセテコウユー産駒とかが出ていたわけですよ。どんなに馬のデキがよくても、買うほうはその父の名だとやはり躊躇してしまうわけで……。

 そう考えると、今の青森のセリ市はかなり狙い目といえるのかも。ちなみに、今年の南関東で最初に勝利した2歳馬も青森県出身だ。ちなみにこの馬はセリでは売れず、セリ終了後に購買者と生産者が直接交渉して取引された馬。そういえば以前、とある馬主さんが売れ残った青森県産馬を「2頭まとめて」の激安価格で買い取って、それがその金額の10倍以上を稼いだこともあったなあ。

 青森の馬産を支える八戸地域には「八戸キャニオン」と呼ばれる巨大な石灰岩の鉱山がある。「ウチの水道管は石灰がだんだんたまってくるから、3年に1回は取替えるんだよね」と、某生産牧場の社長も言っていた。つまり、多くの青森産の馬たちはカルシウム豊富な環境で育っているということになる。

 今年の八戸市場は8月3日の水曜日。かなり興味深いメンバーが集まる予定なので、ホンモノ馬主さんはもちろん、地方競馬ファンもぜひぜひご注目ください!

今年の八戸市場

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グリーンチャンネル・中央競馬中継キャスターを経て、4月からは同じくグリーンチャンネルの新番組「競馬ワンダラー」の案内人を務める。そのほかにも生産牧場や育成牧場の取材、執筆、各地の競走馬セリ市の進行役も。3月には単行本「廃競馬場巡礼」を上梓。競馬のよき語り部としての研鑽を積んでいる。

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