8月3日に大井競馬場で行われるサンタアニタトロフィーに、地方競馬では初めて外国調教馬が招待されて出走することになった。その馬の名は、レッドアラートデイ。アメリカ西海岸のロスアンゼルス近郊を拠点にしてキャリアを重ねてきた6歳馬である。
その馬が7月21日に栃木県那須塩原市にある地方競馬教養センターに到着したという発表があった。そういえば、教養センターには4年くらい行っていないなあ。ということで、久々に突撃してみた。
朝7時半に現地に着いてさっそく馬場に行ってみると、通常メニューで最後となる馬が軽くダクを踏んでいるところ。このあと、レッドアラートデイが馬場に入ってくるらしい。
1周1100mのダートコースからその馬が出ると、教養センターの職員さんが無線で連絡を取りあい始めた。
「消毒準備が完了しました。作業を開始してください」
どうやら現在のレッドアラートデイは検疫中ということで、かなり気合の入った防疫対策がとられているようだ。まずは、トラックが馬場を内、中、外と3周して消毒薬を散布。そのうしろからハロー車が馬場をならしていく。この作業だけで15分以上かかった。
その間、レッドアラートデイは国際厩舎の前で曳き運動。消毒作業が終了したところで攻め馬手が騎乗して、馬場にゆっくりと入ってきた。まずは軽い速足で右回りに1周。近づいていたところで馬体を観察してみると、かなり筋肉ガッシリの馬体だった。それを見てふと思い出したのは、ジャパンカップの公開調教で間近に見たファルブラヴの姿だ。大井競馬から発表されている資料では近10走が全部芝だが、繋ぎの動きがしっかりしているし、個人的にはダートでも問題なさそうという印象をもった。
しかし左回りしかないアメリカ競馬からやってくる馬。問題は右回りに対応できるかどうかだろう。
2周目は少しスピードを上げて、ハロン30秒くらいの速足。4コーナーを回って直線に向いたところで、攻め馬手がガッと動いて手前を強制的に替えさせた。とりあえずスムーズ。この調子なら右回りは問題ないだろう。練習と実戦は別ではあるけれど……。
3周目も同じくらいのスピードでまっすぐ走って今日の馬場入りは終了。3周とも蹄跡がほとんど同じ場所についており、しっかりと調教されていることが窺えた。曳き運動のときも余計な動きをしていなかったし、異国の地に1頭きりで連れてこられてもドッシリしていられる気性にも好感がもてる。あとは大井競馬場での追い切りのデータを参考に、馬券に入れるかどうかをご判断いただければと思います!
しかし受け入れる側はけっこう大変ということが、実際の様子をみてよくわかった。レッドアラートデイが馬場から出たら、再び消毒液を散布するトラックが出動して馬場を3周。その間、検疫厩舎周辺では2人がかりで馬道などに消毒液を撒いていた。馬を送り出すほうも厩務員1名に攻め馬手1名、そして当日はアメリカから騎手もやってくる。さらに通訳さんが付き添っているし、厩舎の前には防護服を着て防護帽をかぶった防疫チェックの職員さんの姿も見えた。
「初めてのことだから慣れないですが、でもこれでマニュアルどおりなんですよ」
とは、地方競馬教養センターの岩崎幸治所長。ちなみに防疫に気を配っていればいいだけではなく、国税局や保健所関係も馬のチェックに来るそうで、その対応という仕事もあるらしい。知らないところでいろいろと手間がかかっていることを実感していると、なんだかレッドアラートデイを応援したくなってきたぞ!
その調教を、遠くからだが朝の作業を終えた騎手課程の生徒が見学していた。これを機に外国からの遠征馬が増える可能性もあるだろう。それも含めて、8月3日のサンタアニタトロフィーは注目したい一戦だ。