8月24日の水曜日、私は荒尾競馬場に突撃中である。今日は九州産馬が目指す大舞台、霧島賞が行われる日なのである。私も毎年春に行われる九州トレーニングセールで司会進行をさせていただいているわけなので、自然と九州産馬を応援したくなっているのだ。
九州産馬といっても、妊娠した母馬を北海道から連れてきたという九州産馬もいるわけで、いわゆる純粋な九州産馬はあまり多くないというのが昨今の情勢。今年の霧島賞に出走する12頭のなかで、父も母も九州在住という馬は4頭しかいないのである。
それだけ九州在住の繁殖馬というのは厳しい状況になっているわけなのだが、逆に言うと、まだまだ九州産馬をどげんかせんといかん、と思って奮闘している人々はたくさんいるということ。九州産馬に根強い需要があることも含めて、荒尾競馬場に突撃すると、この地域がもっている競馬への熱い心が伝わってくる感じがある。
ちなみに今年の霧島賞出走馬の出身地は、熊本が4頭で鹿児島が7頭で宮崎が1頭。競馬は興行という側面があるわけだから、出身地という部分をクローズアップして、生産者やファンなどに訴えかける手は大いにあるだろう。
同じことがなぜ東北産馬でできないのか、とても不思議でならない。数年前までは盛岡競馬場で「東北産馬限定・銀河賞」が行われていたのだが……。ぜひとも被災地復興の願いもこめて、JRAでも地方競馬でも「東北産馬限定戦」を実施してほしいと思う。千葉・茨城産馬を含めて「東日本産馬限定戦」にするのもアリだろう。
と、そんなことを思いながら競馬場に到着して、まずは競馬総合チャンネルの「競馬甲子園」で荒尾編集長を務めている峯村正利さんが勤務する専門紙「荒尾ホース」を購入。
すると、入場無料券を兼ねているうちわがついてきた。さっそくそれをひらひらさせながら入場して1レースから馬券を買い、閑散としたスタンドで「尾林!」と叫ぶ。しかし2着……。でも頭数が少なくても激戦になるのが荒尾競馬のいいところ。少頭数でも侮るわけにはいかないのだ。
しかしさすがに熊本県は暑い。冷房完備のスタンドは今や必需品ですな。第4レースに行われた「頑張れ九州競馬徳重育成牧場」という冠協賛レースでも、表彰式が行われたウイナーズサークルには協賛主が不在のため、主催者方面のかたが賞品を授与……。おそらく来ていると思うんだけどなあ。暑いからスタンドを離れられないのかしら?
「いやあ、暑いっすよ。下からモワーっとした空気が上がってくるんですよ。今日は不良馬場に見えないかもしれないですけれど、けっこう下はぬかるんでいますよ。砂がズボンやゴーグルにベッタリつきますから」
と、西村栄喜騎手。確かにスタンドから外に出て1分くらいで体力が奪われてしまう感じがある。そのなかで戦っている騎手と馬はかなり大変だ。こちらももっとがんばらなくちゃ!
と気合を入れなおしたら、装鞍所で騎手のタマゴを発見! 順調なら来春にデビューを迎える小山紗知伽(おやま・さちか)さんだ。
「出身は熊本市内です。別に牧場とか競馬関係の家にうまれたわけではないんですが、馬を自由に走らせたいなと思って……」
と、騎手の道を選んだ理由を教えてくれたが、それにしても飛び込む世界はけっこう厳しいはずだ。
「今は幣旗吉昭厩舎に住み込んで勉強させていただいています。模擬レースも何回かしてもらいましたけれど、レースはとても面白いですね。ほかの馬が横に来ると力が入ります」
そういう根性があるなら、勝負の世界で頑張っていけるかも。荒尾には岩永千明先輩がいるのも心強いことだろう。
そんな競馬場の表情を感じると、暑い暑いなんて言っていられないなあ。こちらもしっかりと馬券を買って、競馬に参加しなくては!