名古屋市営地下鉄東山線で名古屋駅に近づくと、やたらと長い車内放送が聞こえてくる。いわゆる案内は普通なのだが、たくさんの言語で案内しているのだ。
まず日本語、そして英語、ハングル、中国語が聞こえてきて、最後にポルトガル語。なんとまあ多国籍なことと思うのだが、どうも名古屋という地域は、それがわりと必要とされるような土地らしい。
名古屋競馬場に突撃した11月4日、名古屋駅から乗ったあおなみ線で私の横に座っていたのは、南米の香りがする2人組。その2人は私と同じく、名古屋競馬場駅で席を立った。
「おやおや、あなたも競馬場ですか?」(滝口順平さん風に読んでね)
残念ながらそういうわけではなく、名古屋競馬場駅のすぐ近くにある名古屋入国管理局に用事があるらしい。いつも思うのだが、この建物のなかにはオーバーステイとか密入国で捕まった人がいるのだろうか。駅から競馬場に行くときにこの建物の前を通ると、なんとなく気になってしまう。
それとは別に、以前からあおなみ線の駅の出口表示などが前記した5ヶ国語で書かれているのは気がついていた。しかし、改札口を出たところの表示がこうなっているのは、今回初めて気がついた。
ハングルと中国語の簡体字で、いずれも「なごやけいば」。多国籍な街らしい表示だけれど、韓国も中国本土も競馬がメジャーとはいえないだけに、これが役に立つことはあるのかしら?
でも、川崎競馬場では中東から来日されたとおぼしき人たちが常連状態で馬券を買っているし、東京都千代田区のインド料理店の兄さんが(もちろんインド人)、マークカードを持って走る姿を見たことがある。
郷に入れば郷に従え? 我々日本人も海外旅打ちに出たら、現地の競馬新聞を必死になって解読するわけで、名古屋競馬場がそういう人たちも顧客層に取り入れようと考えているのはすばらしいと思う。
そういえば、名古屋競馬場ではハングルのマークカードをつくる計画があるらしいと噂に聞いた。といっても、今のところそれを必要としている人は競馬場内では見当たらないなあ。今の超円高だと、就労ビザを持っている人にとっては、100円単位の馬券はかなりのぜいたくになってしまうのかも。それでも販路を広げようというのは悪くないことだし、今後の展開に注目していきたい。
ところで名古屋競馬場といえば、3コーナーから1コーナーを結ぶ「たすきコース」跡地という、かつての競馬場を思い起こさせる秀逸な物件がある。そこはかつて障害レースが行われていた舞台であり、コース内には生垣が2つあった。しかし今は……
更地なんですよ。ちなみに2009年時点の写真はこちら。
うーむ。ホームページをリニューアルするとか新しいことをしていくのは歓迎だけれど、競馬遺産的なものをなくす必要はないと思うんですけど。まして普段は使わない内馬場なんだから。
同様に、各地で近代競馬の栄華を感じさせるものがだんだん失われているように感じている。ぜひぜひ各競馬主催者様におかれましては、そういった物件は寛大なる心で保全していただけるよう、衷心よりお願い申し上げます。
古い看板類を外すときには、どうか捨てずに倉庫の隅にでも入れておいてください。そういう物件はいずれ取材して、紹介させていただきますから!