南関東にある4つの競馬場のなかで、売上の下落傾向がより大きく感じられるのが船橋競馬。入場人員も昭和の頃の1万2万は当たり前という時代に比べ、現在は重賞のないド平日開催だと3千人程度。3万人は収容できそうなスタンドを背景にすると、かなり寂しい風景に映る。
その影響で、一般スタンドの4階と5階が現在は閉鎖中。客がいないのにそこを開放して警備員と清掃の費用をかけるのはアホらしい話だから当然といえば当然なのだが、それが実際に行動として現れるまで何年もかかったところが個人的にやや遺憾。それはともかく、現在の船橋競馬の一般席は、1階から3階までの営業となっているわけである。
という状況ではあるが、船橋競馬場内ではいろいろなテコ入れがなされている。まず、3階にあった自動販売機コーナーが食堂に変身。これがなかなかの品揃えなのだ。「いくらまぐろ丼」「バラちらし丼」「デミかつ丼」「ホルモンカレーうどん」……。そのほかにもいろいろなメニューが表示されていて、よくある競馬場の食堂とはちょっと違うぞという商品構成になっているのである。
といっても、店内はわりと競馬場的な雰囲気が残っている感じ。とりあえずは、ということで店頭の大きなポップで宣伝されていた「デミカツ丼」を注文してみた。
うーむ、昔の「洋食」っぽい味がするなあ。でも内容的には大満足の600円。まだまだいろいろ試してみたいから、次の開催以降は来るたびに1つずつメニューをつぶしていくことにしよう。
食後にスタンド内を徘徊していると、おや、2階に店ができている。店といっても、駅前の路上でアクセサリーを売っているような簡単なつくりの店だ。
「うま雑貨 TOKORO」(最後の文字はハート)という看板の横には机があって、その上にネックレスやトートバッグ、Tシャツなどが並べられている。馬のしっぽの毛がついている携帯ストラップもあった。商品は、基本的に馬が関係しているか、馬がデザインされているかのどちらかがほとんどのようだ。
「私は乗馬クラブのスタッフなんですけど、クラブでこういう店を競馬場に出すということになって、私が行きますって手を挙げたんです」
と、店番をしているお姉さん。この場所は冬になるとちょっと寒そうだけれど、こういう店が新たにできると競馬場のなかが活気づく。そんな話を聞いていたら、「今のレース当たったよ」と、おじさんがキャップを買い、その場でかぶって去っていった。おお、すげえカッコイイ。
「みんな優しくしてくれますよ」
と、お姉さん。確かにこの空間では若い娘は貴重だものなあ。大切にされるのもわかります。
この店は開催日すべてに出店する方針ではないようだが、おそらくクイーン賞の日は開店しているはず。現地に突撃した際には、ぜひ馬グッズのラインナップをチェックしてみてほしい。
そのクイーン賞があるのは、12月7日の水曜日。毎開催の水曜日には、成田山新勝寺の近くにある漬物屋さんが入場門近くで店を出している。競馬場からの手土産にする人が多いようで、最終レース後がいちばん忙しい時間帯だ。店主によると、店頭にある漬物はすべて保存料などを使っておらず、自然の風味で味付けされているとのこと。個人的にもよく買っており、ここの漬物を買うために船橋競馬場に来ようと思うくらいだ。
ちなみにここの店主、自宅ではグリーンチャンネルを見ているほどの競馬好き。そのおかげか、いつも楽しそうに仕事をしている様子に好感がもてる。やっぱり競馬場のテナントさんには、競馬や馬が好きな人がいるのがベストだよなあ。そういう人たちの暖かさが伝わってくる売店は、競馬場へのリピーターを増やすための重要な要素になっているはずだ。