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水沢競馬場

  • 2011年11月30日(水) 18時00分
 今年は3月19日から冬休み明けの開催が始まるはずだった水沢競馬。ご存知のとおり、競馬開催ができるような状況ではなくなったため、しばらく競馬開催は取りやめとなってしまった。

 とはいいつつも、水沢競馬場では在厩馬の調教は行われていた。しかし目標が与えられない状況での馬の調整は難しかっただろうし、人間のモチベーションを維持するのも大変だっただろう。

 そのうち、JR貨物が東京から青森経由で石油を輸送するといった関係各所の復旧努力があって燃料不足も解消され、水沢から盛岡への出走馬輸送も可能に。そして5月14日から盛岡競馬が再開されたわけである。

 しかし水沢競馬場は開催できないまま。水沢の馬場には地震の影響があまりなかったと岩手競馬の関係者から聞いていたが、スタンドがかなり厳しい状況だったらしい。震災直後のスタンドを直接見ることはできなかったが、11月に水沢競馬場に突撃してみて、まだ残る影響を感じ取ることができた。

 ゴールに近い古いスタンドには、秋の始めごろまで外周すべてに足場が組まれていたとのこと。それも11月には新スタンドと隣り合っている部分だけに縮小されていた。しかし古いスタンドと新スタンドの間には謎の段差が。おそらく地震での地殻変動が原因だろう。建物自体が傾くところまでの影響がなかったことは、不幸中の幸いといえるかもしれない。

今でも一部に足場が残る

 古いスタンドの建物内にはブルーシートで覆われた部分がたくさん。でも、目に見える範囲内の様子は、以前とあまり変わっていないように思える。でも、そういうふうに感じるのも、これまでの数か月間で修復してきたからこそなのかも。それがよくわかったのが、2階のJRA発売所のところ。建物の壁がなくなっていたのだ。

壁が損壊したところも

 地震で崩壊したのか、亀裂がひどくて全とっかえになったのかは不明だが、いずれにしても養生シートが壁になっているという状況。これは早いところふさがないと寒い時期には厳しすぎる。

 そういえば古いスタンドのなかは照明があまり灯っておらず、全体的に薄暗かった。電気系統の整備もこれから急ピッチで行われるのかもしれない。

 場外発売時に馬券を売っているのは、以前と同じく新しい方のスタンド。なかに入ると日曜日の12時の時点で500人くらいの入場者数だった。アレレ、窓口が自動発売機になっているぞ。前からこうだったっけ? と疑問に思って案内所のお姉さんに尋ねると、

「5月くらいに自動発売機に替わりました」

 とのこと。オバサンたちがずらりと並ぶ窓口で馬券を買うのが水沢スタイルだと記憶していたが、震災後にこういうところを更新していたのね。それとは関係なく、ワイワイガヤガヤしているのは以前と変わらない雰囲気だ。でも、2階に行くエスカレータは運行停止。このあたりは震災の影響があるのかもしれない。

 この訪問から1か月後の12月10日から水沢競馬は再開される。見た感じの印象では、間に合うのかと心配になったが、きっと工事業者がプロの仕事ぶりを見せてくれるはず。それでもすべてが震災前と同じ、というわけにはいかないだろう。全国各地の競馬ファンは年末年始を含むおよそ1か月の水沢開催に突撃して、被災地の姿を少しでも感じてもらえたらと思う。

 そのときには、競馬場の入口近くにあるこのスポットにも要注目。ちょっと古い標識が道路の隅に立っているのだ。

馬の通る場所に標識がある

 この標識の先が厩舎と競馬場を結ぶ、競走馬の通行ルート。アスファルトの一般道を横断する馬の姿が見られるのも水沢競馬場の特徴のひとつだ。そこで「プレパドック診断」をしてから競馬場に入場するというのも面白いかも!?

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グリーンチャンネル・中央競馬中継キャスターを経て、4月からは同じくグリーンチャンネルの新番組「競馬ワンダラー」の案内人を務める。そのほかにも生産牧場や育成牧場の取材、執筆、各地の競走馬セリ市の進行役も。3月には単行本「廃競馬場巡礼」を上梓。競馬のよき語り部としての研鑽を積んでいる。

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