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興味深き浦和競馬場

  • 2011年12月14日(水) 18時00分
 日本の競馬場で、ごく普通にダートコースを歩けるというところはなかなかない。しかし浦和競馬場は別。競馬場には2本の一般道があり、開催日以外ならそこを通行できるのだ。そのルートは、1コーナー手前から2コーナーを結ぶ直線と、4コーナーから3コーナーを結ぶ直線。いずれも自動車では突っ切れないが、徒歩や自転車では通行が可能だ。ちなみに1コーナー手前の様子はこんな感じになっている。

1コーナー

 で、2コーナーはこんな感じ。

2コーナー

 ということで、向正面ではモロにダートコースを横切る形になっているわけだ。その奥にはかつて、東京の大学などに通う若者が暮らす学生会館があった。多感な時期にそこから馬が走る姿を見下ろして、そしてその道を究めることになった有名な競馬評論家がいるらしい。個人的にもこういう場所に一度は住んでみたいぞ。

 馬場の内側は、いわゆる普通の公園になっている。私が訪れた日も午後4時頃ということで、小学生とおぼしき子供たちがサッカーボールを蹴っていた。その奥にはレース映像を放映する巨大なビジョン。ダートコースをはさんだ反対側には無数の馬券オヤジ……。そのコントラストがあまりに対照的だが、住民のみなさんにとっては普通の光景なのだろう。高齢だけれど警備員がそれなりに配備されているわけだから、治安もまあまあいいだろうし。おおそうか。この近所のオバサンは南浦和に買い物に行くとき、無料バスを使えるのか。この近辺の不動産物件は、それをプラス材料に盛り込むことも可能では!?

 そんな感じで浦和競馬の開催日以外は競馬場内が自由自在なので、前から興味があった「競馬場を横に突っ切る川をまたぐ橋」を見に行った。コンクリートの橋の上を馬たちがドドドと走るとき、どうやら橋が揺れるらしい。以前、浦和記念で1番人気だったのに負けてしまったJRA所属馬の敗因は、その揺れで馬がビビッてしまったからだと聞いたことがある。

橋

 うーむ、確かに踏み固められた路盤と同じとはいいがたい感じ。繊細な馬のことだから、本来の着地地点とは違う高さに地面の位置が変わったら、ほんの少しの差でも「アレ?」と思うかもしれない。浦和が初コースだという馬は、ちょっと評価を下げたほうがベターかも。

 ダートコースも大開放中なので歩いてもたぶん怒られないと思うのだが、足跡がひとつもなかったのでちょっと躊躇(チキン)。ジョギングをしている人もラチの内側を走っていたし、「馬の気持ちになってトレーニングしよう!」と考えるのは少数派なのかもなあ(汗)。ということで、私もラチ沿いのケモノ道を歩いて馬場を半周し、4コーナー地点にやってきた。

 その場所から3コーナー方向を眺めてみる。日本でもっとも気合が入っている浦和1600mのスタート地点はすぐそこだ。しかしすごすぎる……。

1600m

 この場所はゴールまで残り200mの標識と1500mのスタート地点の中間付近なので、1600mのスタート地点まではおよそ150m。その間にあるカーブのエグさに改めて驚かされた。映像やスタンドで見るのとは大違い。改めて、浦和1600mは内枠の先行馬を3割増で評価しようと思わされる風景なのであった。

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グリーンチャンネル・中央競馬中継キャスターを経て、4月からは同じくグリーンチャンネルの新番組「競馬ワンダラー」の案内人を務める。そのほかにも生産牧場や育成牧場の取材、執筆、各地の競走馬セリ市の進行役も。3月には単行本「廃競馬場巡礼」を上梓。競馬のよき語り部としての研鑽を積んでいる。

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