12月1日はレディースジョッキーズシリーズに武豊騎手来訪、そして12月23日は最終最後の荒尾開催。12月1日は武豊騎手のトークイベントが終わると観客が減り、たんぽぽ賞が終わるとまた観客が減り、最終レースの頃にはいつもの荒尾競馬場の姿になっていた。しかし非日常といえば非日常。お昼時にスタンド2階のラーメン屋さんの前にお客さんが10人ほど群がっていたのも、いつもの荒尾ではなかなか見られない光景だった。
イベントがあったとはいえ、普通の木曜日でけっこうな混み具合だったのだから、祝日に実施される最終日はもっとすごいことになるはず。個人的に地方競馬場の最終開催日は、益田、高崎、足利、宇都宮、北見、旭川と現地で見届けてきた。このうち、普段どおりという感じだったのは北見だけ。そのほかは多くの観客で賑わい、そして遠方から来たと思われる人の数も多く見られた。
競馬場が大にぎわいになるのはいいのだけれど、それが最終日だから、武豊騎手が来るから、という理由であることには違和感がある。そう思ったので、12月1日に続いて2日も荒尾競馬場に突撃することにした。いわゆるド平日の開催である。さっそく第1レースの馬券を外向け発売所に立ち寄って購入。しかし5頭立てなのにハズれた!
続く第2レースも見当違い。うーん、今日はダメかも。こういうときは「日本一ビッグなトラックマン」でおなじみ、荒尾ホースの峯村正利記者に助けてもらうしかない。すると、「今の荒尾はひょっとしたら、日本でいちばん馬券が難しい競馬場かもしれないですよ」と、開口一番。
なるほど、12月23日以降も調教師を続けると発表されているのは、12月20日現在で14名のうち3名だけ。となれば、23日がラストとなる調教師が、いつ所属馬に勝負仕上げを施してくるのか。それを見極めるのはむずかしいかもしれない。しかも今年のリーディングトレーナーを争っている工藤栄一師と平山良一師の名前は、佐賀に移籍する3名のなかには入っていない。いったいこれからどうするのだろう?
「来年からは山のほうに引っ越して隠居ですよ。熊本に来たら遊びに来てね」と、63歳の平山師はさみしそう。
軌道に乗って繁盛している厩舎という事業なのに、元請けが倒産したばかりに仕事を失い、しかし同じ業種の別の取引先(つまり佐賀競馬場)との契約は結ばせてもらえなかったという状況はつらすぎる。62歳の工藤師ともども、これまで実績を重ねてきた腕があるだけに、荒尾競馬の廃止とともに厩舎も解散となってしまうのは本当に惜しい。もったいない。なんとかならないものなのだろうか。
当事者の気持ちには遠く及ばないが、私も「廃止を目前にしている」という関係者の気持ちを感じながら、峯村記者からのアドバイスも加味して予想する。しかしそれでも当たらん……。そんな流れで迎えた第6レースで、岩永千明騎手の通算200勝達成を目撃することとなった。
「荒尾で200勝を達成できてよかった! 一時はダメなんじゃないかと思っていたんですよ」
と、岩永騎手はうれしそうな表情。所属している幣旗吉治厩舎の管理馬で達成できたということも、喜びに輪をかけたに違いない。
その岩永騎手は荒尾最終開催終了後、現所属調教師の弟さんである幣旗吉昭厩舎所属として、佐賀競馬場に移籍予定。200勝という区切りはついたが、次の目標に向かって元気にがんばってほしいところだ。
しかしさすがに普通の金曜日だけあって、場内の人影はまばら。夕方からは雨が降ってきて、競馬場内がさらなる寂寥感に包まれてしまった。それでも荒尾所属の人馬は、最終レースまでファイトある走りを披露してくれた。
残すところあと1日。12月23日は私も現地で最終日の荒尾競馬場を見届けるつもりだ。