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皆川麻由美騎手引退

  • 2012年01月11日(水) 18時00分
 12月10日に復活開催が始まった水沢競馬場。シーズンが終わる前に突撃しようということで、オーラス開催の1日前に行ってきた。東北新幹線の車窓からは、宮城県内までは雪があまり見られなかったものの、岩手県に入った途端に白い田んぼが目立つように。そして水沢江刺駅前通りはシャーベット状になっていた。

 タクシーの運転手でもハンドルを取られる悪路を通って、水沢競馬場に到着。おお、11月に来たときには真っ白だった競馬場前の壁に、子供が描いた馬の絵が飾ってある!

馬の絵

 ほのぼのとした絵を見ながら歩いて競馬場に入場。この日は皆川麻由美騎手の引退セレモニーが行われる予定になっている。とはいえ、本当の引退は翌日の第7レース。でもひとまず区切りとして、この日に式典が組まれることになったようだ。そしてこの日の最終騎乗は第8レース。コンビを組むクレバーマッスルは、近走が微妙な成績ながら、単勝2番人気になっていた。おそらくたくさんの応援馬券が買われたんだろうなあ。

 そして騎乗周になると、ファンから「マユミ!ケッパレ!」などの声援がたくさん。その声に送り出された皆川騎手だが、レース結果はブービーだった。

パドックにて

「いやあ、見せ場もなかったけど……。でもすごかったですね。パドックの声援が。応援なんだかヤジなんだかわからないけど。おかげで馬がイレこんでしまって、こっちの余裕がなくなって(笑)」

 それにしても、今シーズンは開幕からケガの影響でレースに出られず、ようやく長期休養が明けたと思ったら引退発表。どうしてこの時期に、と思ったのだけれど。

「ちょっと父の体調が思わしくなくて、この時期に家業を継ぐことに決めたんです。まあ正直なところを言えば、もう少し乗っていたかったですよ。何のために脱臼の手術を受けたんだかってねえ。でも親孝行ですからね。けっこう今まで自由にやらせてもらったから……」

 と、少しさみしそう。「馬に乗るのが好き」という皆川騎手だが、競馬の世界から離れて埼玉県に引っ越すと、競走馬には簡単に乗れない状況になってしまう。なんだかもったいない気もするなあ。

「これまでの騎手成績といえば、まあアレですけれど、恵まれた騎手人生だったと思いますよ。岩手って本当にいい人ばかりだし。レディースジョッキーズシリーズでの勝利もうれしかったですけれど、岩手で勝ったときがうれしかったですね。厩舎に新馬が入ってきて能検に向けて育てていくとか、そういうことも面白かったです。つらかったことですか? そうですねえ。ケガしていたときにヒマでヒマでしょうがなかったことがいちばんですかね?」

 仕事は厳しくても、決してつらいという考え方にはならない。それこそが、皆川騎手らしさの原動力なのだろう。

「引退するとたぶん太ると思うんですよ。でも2月19日は川崎競馬場のポニーレースに出場しますから、そのときはキッチリ体を造っていきますよ!」

 ということは、本当の引退レースはフェブラリーステークス当日の川崎競馬場。はるばる「金沢ちびうま団」からポニーを招聘して実施されるレースには、金沢競馬から冬季遠征中の吉原寛人騎手と米倉知騎手、地元川崎からは佐藤博紀騎手なども騎乗する予定だから相手は強力だ。ちなみに発走予定時刻は12時頃とのことだから、皆川騎手のラストランを応援してから東京競馬場に行ってもGIに間に合いますよ!

 1月8日の全レースが終わった午後4時頃。パドックでは引退セレモニーが始まった。挨拶、騎手全員での記念撮影、そしてファンへのプレゼント。パドックを囲んだファンからはたくさんのプレゼントも渡されていた。そして胴上げ。続いてふじポンさんの「いくよ!」の掛け声からの、
「ダブルコマネチ!」

Wコマネチ

 7年3ヶ月という短い期間だったけれど、皆川騎手は間違いなく岩手競馬の功労者だと思える温かいセレモニー。次のステージでも大活躍となることを祈りたい。

 そうそう、家業を継ぐということは、つまり実業家になるわけですな。

「馬主って年収どれくらいあればなれるんですかね? ……そうですか〜。よおし、なんとかがんばって、岩手に馬を預けられるようになることを目指しますよ!」

 ガンバレ! 皆川麻由美!!
ガンバレ! 皆川麻由美

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グリーンチャンネル・中央競馬中継キャスターを経て、4月からは同じくグリーンチャンネルの新番組「競馬ワンダラー」の案内人を務める。そのほかにも生産牧場や育成牧場の取材、執筆、各地の競走馬セリ市の進行役も。3月には単行本「廃競馬場巡礼」を上梓。競馬のよき語り部としての研鑽を積んでいる。

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