スマートフォン版へ

冬のソウル

  • 2012年01月25日(水) 18時00分
 3年連続で突撃している「冬のソウル」。一昨年は名古屋から遠征中だった加藤利征騎手を応援。昨年はオーストラリアから韓国に来ていた浜田騎手から、寒さに対する苦労話を聞かされた。確かに昨年も一昨年もソウル市内を流れる漢河は凍っていたからなあ。ソウル在住の友人(韓国人)からも「寒くて死にそうです……」というメールが来ていたし。

 しかし今年はどうやら暖冬らしい。さらに今年はソウル競馬場に日本人騎手が3人もいるのだ。6月から短期免許を取得した野田誠騎手(福山)、12月から騎乗を始めた井上俊彦騎手(北海道)、そして韓国ですでに2ケタの勝ち星を挙げている別府真衣騎手(高知)である。

「いや〜、聞かされていたよりも寒くないですね」と、野田騎手。

 ちなみに私がソウル競馬場に突撃した1月15日の気温はプラス5度だった。韓国は基本的に空気が乾燥しているから、数字ほどの寒さが感じられないのかも。しかしながら、そう言っていられるのは太陽が出ている間だけ。日が傾くと一気に体感気温も下がってくるから、気をつけないと危なくてしょうがない。

 さて、この日のスタートは6レースから。年末年始に開催が2週間なかった影響なのか、各レースとも荒れぎみだった。前日に競馬新聞を手に入れて、この日いちばんの勝負レースと踏んだ8レースのビワシンセイキ産駒も、パドックでの姿を見た限りではいまひとつ伝わってくるものがない。うーむ、今日も負けムードか……。

ビワシンセイキ産駒

 案の定、その馬は完敗。この日は日本産の父をもつ出走馬が何頭かいたが、どれもいまひとつという結果だった。日本の底力を頼りにしているのに〜。

 その代わり、9レースで人気薄を2着に食い込ませたのは井上騎手。

「いや〜、2着ばっかりなんだよねえ〜」

 と言いながらも笑顔。韓国に来て1か月ほどだが、今の生活を満喫しているようだ。

活躍が期待される井上騎手

 野田騎手は土曜日が11鞍、日曜日が8鞍と、多くの騎乗数を確保。有力馬は地元の上位騎手へという流れがあるので勝ち星こそ伸びていないが、しっかり乗ってきてくれるという評価は得られているようだ。

 別府騎手は昨春のケガを治療したときに埋めた金属を除去する手術を受けたことで、1月一杯は休業中。それでも2月から実戦騎乗を再開すべく、準備を進めているとのこと。日本人騎手3人揃い踏みのシーンが見られるのももうすぐだ。

 それはそれでいいのだが、個人的な馬券が当たらないのことよ。いつもならパドック診断でズバリと来る馬を判定できるんだけどなあ。ようやく当たったのは最終前。2頭軸相手総流しの3連複(86倍)で、ノーホーラをギリギリ回避できましたとさ……。

 その的中を潮に競馬場から退散。ソウル競馬場は1月なのにラスト2レースはナイター状態になるので、外に出ていると恐ろしいほど寒いのだ。最終レースに騎乗していた野田騎手も「連続騎乗だったから対応できましたけれど、本当にシャレにならない寒さですよ」と、ボヤいていた。客が凍えるくらいなんだから、薄着で風を切る騎手はもっとキツイはず。そんな状況なので、最終レースのパドックには人影がほとんど見られなかった。

 しかし騎手の仕事は競馬だけではないのである。翌朝5時半。照明が灯されたソウル競馬場では、たくさんの馬が調教に臨んでいた。モニターに表示されていた気温はマイナス8度。日の出の時刻は7時半頃だから、これからまだ気温は下がるはずだ。

「まあ寒いは寒いですけれど、完全防備で乗っていますからね。でも福山より朝が遅いから楽ですよ(笑)」

 と、野田騎手。この日は全休日前なので調教で騎乗するのは3頭。それでも週末にフル稼働しての翌日だからなあ。ちなみに開催日もレース前に調教をするらしい。かなりの長時間労働じゃないですか!

野田騎手、防寒対策でモコモコ

 こちらも寒さに負けず、夜明け前の調教を見学させてもらった。そこで見かけたのが、馬を調馬索でぐるぐる回らせている人たちだ。これって乗馬の調教じゃないの?

「ソウルの馬ってパドックでイレこまないし、ゲートでもすごくおとなしいんですよね」

 と、短期免許取得者3名が揃って頷いたこの地の競走馬の特徴。その理由のひとつには、この「乗馬ウマ的な調教」があるのかも?

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

グリーンチャンネル・中央競馬中継キャスターを経て、4月からは同じくグリーンチャンネルの新番組「競馬ワンダラー」の案内人を務める。そのほかにも生産牧場や育成牧場の取材、執筆、各地の競走馬セリ市の進行役も。3月には単行本「廃競馬場巡礼」を上梓。競馬のよき語り部としての研鑽を積んでいる。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング