入場人員が減少してきて……というのが、目下の南関東の4競馬場の悩みのひとつ。でも売り上げの額は以前とそれほど変わらないというのだから、在宅投票や南関東競馬チャンネル、さらにはネット中継がこの世になかったらどうなっていたんだろう、という怖い想像をときどきしてしまう。しかし競馬場に来たファンは基本的に競馬以外のことはしないわけだから、現地に突撃する人が増えることは競馬主催者にとってプラスの作用になるはずである。
ということで、いろいろと各主催者や関係団体は競馬場にファンを呼べるようにと考えている。船橋競馬場はとくに、大型プリンターを使って自前で作成したポスターを掲示したり食堂のテコ入れに力を入れたりで、非日常感の演出に力を入れているように見える。
オッズオンのスパゲティ
なかでも個人的に魅力的だと感じているのが、スタンド3階。食堂が撤退して長らく自動販売機コーナーになっていたところにオープンした「オッズオン」が、煮物揚げ物が多い競馬場フードとは一線を画す品揃えで勝負しているのだ。
メニューに書かれている品数も多く、個人的にこの店がオープンしてから行くたびに違うものを注文しているのだが、まだ踏破までは遠い状況。ひとつひとつコツコツと……ということで、今回はデミグラススパゲティを注文してみた(600円)。洋食屋さんみたいな感じでいいですな〜。半熟卵と絡めて食べればなおおいしい。
ということでエネルギーの補給を完了して、なんとなく4コーナー方向に向かってみる。ガラス張りエリアのいちばん端にある売店「田久保」も、以前とはメニューが少し変わっている感じがする。ここの「醤油らーめん」はまだ食べたことがないぞ。船橋競馬場にはおそらく100回前後は足を運んでいると思うのだが、まだまだ未体験ゾーンはたくさんあるのだ。
3階ベランダでの競馬観戦
未体験といえば、3階ベランダでの競馬観戦もまだしたことがない。提灯の下で丸テーブルを囲んで一杯やりながらワイワイやる競馬は魅力的に映る。ゴール寄りの店には各種アルコールが揃っているし、4コーナー寄りの店には「船橋競馬場名物・もつ焼き」がある。昼間っから飲んで競馬するって最高じゃないですか!
でも、こういう「くつろぎの場」がある競馬場って、意外と少ないような気が。どこの競馬所でも観客は同じ方向にばかりに顔を向けていて、観客同士が向かい合うという構造にはあまりなっていない。競馬をエンターテインメントとして捉えるならば、観客席にこういう場所を設置するのも悪くないのでは?
そんなことを思いながら、最終レースまで滞在。さあ、それでは帰ろうかと出口に向かうと、漬物屋さんが金曜日の今日も店を出している!
成田漬物本舗の篠塚清さん
「ハイ、開催日は毎日、店を出させていただいているんです」と、店主の篠塚清さん。重賞がある日だけなのかと思い込んでいたものだから、普通の開催日にお目にかかれるとは思っていなかった。すっかり感心していると、お店に立ち寄る人が続々。漬物といえば保存食品だから、1か月に1度、ここで補給をして自宅に帰るというのはちょうどいいサイクルなのかもしれない。この売れ行きなら開催日すべてで店を出す甲斐もありそうだ。
正式な屋号は「成田漬物本舗」だそう。成田山新勝寺の門の前にお店があって、船橋競馬場には競馬が趣味であるご主人の希望で店を出されているそうだ。客層にもマッチしているお店だし、こういう方向性で競馬場の魅力を高めていくのって、とてもいいと思うなあ。