5月20日、今年も行ってきましたソウル競馬場のコリアンダービー。昨年はメイセイオペラ産駒のソスルデムンに内田利雄騎手が騎乗するという大きなテーマがあった。でも今年はそういう人馬がいないよなあ……と思っていたら、釜山慶南競馬場で短期免許を取得している愛知の安部幸夫騎手と福山の楢崎功祐騎手が参戦するということが、韓国に渡る直前になって判明した。
つい3年前は、西村栄喜騎手(現在は船橋所属)で3歳3冠初戦の「KRAカップマイル」を制したサンスンイルロがダービーに参戦するとき、「日本人騎手は……」みたいな理由で地元騎手に乗り替わったというのになあ。時代は変わるものだ。さらに楢崎騎手の馬は完全なテン乗りなのだから、これは単純に技術を評価されたということなのだろう。
ともあれ、コリアンダービーに外国人騎手が2人乗るというのは大トピック。昨年の内田騎手はダービーだけの騎乗だったが、今年の2人はダービー前にも騎乗がある。そのあたりからも、ちょっとずつ韓国の競馬界の意識が変わってきているように感じられた。
安部幸夫騎手
ということで、私も前日から競馬場に突撃! ソウル市内で用事を済ませていたら上野翔騎手のレースに間に合わなったが(ちなみに3着)、安部騎手が乗る第7レースはパドックから参戦。その騎乗馬、マイティドバイは、前走がブービーという成績の休み明け2戦目。しかも過去に出走取消と競走除外が、能試、実戦含めて計4回もある(通算10戦、能試5回)という、わけわからん馬なのだ。ということで、単勝人気も10頭立ての8番人気。それでもパドックの馬券オヤジからは「アベ!!」という大声がいくつか聞こえてきた。安部騎手はソウル初騎乗だが、釜山の場外発売で名前はすっかりおなじみなのだろう。しかしその口調だと、安部騎手が怒られているみたいな感じだぞ。
そんな声に発奮したのか(?)、その人気薄を2着に導いたから安部騎手はスゴイ。パドックでの馬の様子と成績を見て、馬券はお付き合い程度にしか買わなかったのに……。「ダービー当日は日本人騎手絡みの馬券を全力で買おう」と心に誓ったのであった。
ちなみにこの日のメインレースはオープン特別の「JRAトロフィー」。中山競馬場で実施されている「韓国馬事会杯」の交換競走にあたるレースである。1着賞金は8100万ウォン(約560万円)。韓国の競馬は昨年よりも賞金が上がっており、右肩上がりの発展産業になっていることがよくわかる。
楢崎功祐騎手
明けて日曜日は、コリアンダービーデー。ダービーの前に、安部騎手は第5レースと7レース、楢崎騎手は第6レースに騎乗する。本番前にソウルの馬場を実戦で経験できるのは、大きなプラスになることだろう。
さあ、いよいよ第8レースのダービー。出走馬はフルゲートとなる14頭で、安部騎手は9番人気のフィリップ、楢崎騎手は7番人気のノベルポップン(ともに釜山所属)が騎乗馬だ。
1着賞金が3億2千4百万ウォン(約2260万円)という1800m戦。安部騎手は好スタートから2番手グループの外を追走したが、楢崎騎手の馬は行き脚がつかずに最後方。それでもやっと最後の直線でエンジンがかかって、馬群の外を一気に伸びてきた!!
私がいた位置はゴール地点から50mほど1コーナー寄りだったので、「楢崎騎手の馬が勝ったのでは!?」とビビリまくったが、結果は早め先頭の競馬をしたチグミスンガンが1馬身先着。楢崎騎手は惜しくも2着。安部騎手は8着という結果だった。
コリアンダービー(提供:木村良明氏)
「いやあ、ゲートを出てから進んでいかんけえ、仕方がないからうしろでじーっとしていたから、最後の伸びにつながったんだとは思いますけれど……。めちゃめちゃ悔しいですよ」
と、レース直後の楢崎騎手。かなり惜しい内容だったけれど、個人的にはよく2着まで来たと思う。内容的にも好騎乗といっていいのではないだろうか?
なお、勝ったチグミスンガンは、済州島で種牡馬生活を送っているイングランディーレ産駒。これで11戦4勝、重賞初勝利がダービーとなった。
ちなみに今、韓国で種牡馬生活を送っている主な日本調教馬は、アドマイヤドン、イーグルカフェ、エアスマップ、オースミジェット、ビワシンセイキ、ニホンピロニール、マイネルセレクト、メイセイオペラなどなど。「サンデー系の種牡馬が欲しいなあ」とは、済州島で牧場を経営している社長さん。もし寄贈しても良い、というオーナー様がいらっしゃいましたら、ぜひよろしくお願いします!