松田国師野心タップリの1頭 キンカメ×ダイワスカーレット/吉田竜作マル秘週報
◆松田国調教師「もう山元トレセンに到着していて、今は輸送の疲れを取りながら調整しているところです」
3歳牡馬、牝馬戦線ともクラシック第1弾が終了。桜花賞はレッツゴードンキ、皐月賞はドゥラメンテと、いずれもキングカメハメハ産駒が勝つ結果となった。特にディープインパクト産駒が最も得意とする桜花賞で、産駒の5連覇を阻んだのは称賛されてしかるべきだろう。逆に皐月賞は「ディープ産駒の七不思議」に数えられるほど苦手とされてきたレース。個人的な感想を言わせてもらえれば、2着リアルスティールはよく健闘したのではないか。
とにかく皐月賞でのドゥラメンテの切れ味にはド肝を抜かれた。母アドマイヤグルーヴはもちろん、その産駒たちもずっと見てきたが、いずれも高いポテンシャルを有しながら、気性面の難しさでそれを発揮できないケースが多々あった。それだけに“肉弾戦”となってもあれだけの爆発力を失わなかったのはサプライズ。「切れやすい血統馬」を幼少期からケアし、強いハートの持ち主に育て上げた生産のノーザンファームと関連の育成牧場の尽力には頭が下がる思いだ。
もちろん父キングカメハメハも改めて種牡馬としての評価を上げた。皐月賞の結果を受けて、「気性の難しい母系にはキングカメハメハ」という血統戦略もさらに広がるはず。すでにルーラーシップ、ロードカナロアという後継種牡馬も出ているが、まだまだ「父健在」を今後もアピールしてくれるのでは。
その“キンカメ”で忘れてはならない人が、現役時代に管理していた松田国調教師。クロフネ、タニノギムレット、そしてキングカメハメハ…毎週の出走馬のコメントをする際も、ちょいちょい出てくるのはかつて管理していた名馬たちのエピソードだ。一競馬ファンとして懐かしさが込み上げる貴重なひとときなのだが、一方で肝心のキュウ舎のキンカメ産駒の成績はちょっと寂しいものになっている。
クロフネからは朝日杯FSの覇者フサイチリシャールが、タニノギムレットからは京都新聞杯勝ちハギノハイブリッドといった芝の重賞ウイナーが出ているのだが、キンカメからはなぜか芝のタイトルウイナーが出ていない(もちろん砂ではJCダートの覇者ベルシャザールが出ているが…)。他からは多くの活躍馬が出ているのだから、これは由々しき問題と言っていい。しかし、そんな悪い流れも今年でピリオドを打つことになると個人的には確信している。
「もう山元トレセンに到着していて、今は輸送の疲れを取りながら調整しているところです」と松田国調教師がうれしそうに話してくれたのは、母ダイワスカーレット(牝=父キングカメハメハ)の近況。「ゴールデンウイークが過ぎたら栗東に連れてきてゲート試験までやるつもりです。(生産の社台ファーム代表の吉田)照哉さんは“(夏の)新潟で使ってもいいですよ”と言ってくれましたが、そこまではまだ考えていません。とりあえずこちらに来てからですね」という話しぶりから、かなり仕上がりが進んでいることがわかろう。
「一度関東の方に産駒が行ったので、もうウチには来ないかなとも思っていました。こういう馬が帰ってくるというのは、今の時代ではなかなかある話ではない。この一頭で流れを持ってきたい」と野心たっぷりのトレーナーのメガネがキラリと光った。
ちなみに他にも母プレイガール、母ミルフィオリといったところが高い評価を受けているとのこと。今年の2歳世代は「マツクニ=キンカメブランド」から目が離せそうにない。