松田国師方向転換の裏に名牝ダイワスカーレットの面影が…/吉田竜作マル秘週報
◆松田国調教師「この馬も先々のことを考えれば、(ダイワスカーレットと)同じようにした方がいいと思います」
日本ダービーが終わり、新たに2015-16シーズンのクラシックロードが開幕する。
阪神開催の新馬戦には評判馬トウショウジャイロ(牡=父ダイワメジャー、母シーイズトウショウ・角田)が登場予定。半兄トウショウピストが激しい気性でキュウ舎の手を焼かせたのに対し、こちらは「気性がどっしりしている」と角田調教師。問題のトウショウピストもPOG期間内に2勝の“ノルマ”はクリアしたのだから、クラシックとは言わないまでも、朝日杯FS出走くらいは計算できる? いずれにせよ、開幕初日(6日)の阪神芝外1600メートルはこのトウショウジャイロが一歩、いや、かなりリードしていると考えるのが妥当なところだが…。
個人的に注目しているのはウインオスカー(牡=父スクリーンヒーロー、母グローリサンディ・飯田雄)。安田記念で高い支持を集めるモーリスはもちろん、ダービーに出走したグァンチャーレ、ミュゼエイリアンらの活躍から、スクリーンヒーロー産駒はPOG的にも要チェックと思っていただけに、早々にデビューのメドが立っていたこの馬の取材には熱が入った。「牧場で十分に乗り込んでいたようだね。走りがきれいで伸びがある」。飯田雄調教師の言葉からもウインオスカーがスクリーンヒーロー産駒のいい面をしっかり受け継いでいることがわかる。実際、先週のウッド追いでは6ハロン84.0-12.3秒と、この時期の2歳馬としては上々のタイムをマーク。個人的にはトウショウジャイロ一蹴のシーンまでひそかに期待している。
開幕週の熱い戦いが注目される一方で、静かに歩を進めようとしている馬もいる。名牝ダイワスカーレットを母に持つダイワウィズミー(牝=父キングカメハメハ・松田国)がその代表と言えようか。当初は「夏の新潟開催でも、と言われている」と松田国調教師は早期デビューをにおわせていたが、ここにきて予定めいた話を一切しなくなった。もちろん順調さを欠いているわけではない。むしろ松田国調教師が“本気”になったからこそだ。
「ゲート発進の際にどうしても一完歩遅れてしまう。お母さんも気性のきついところがあって、ゲートには時間をかけた。この馬も先々のことを考えれば、同じようにした方がいいと思います。パワーがあり余っている感じなので、まずは力を抜くことを覚えさせて…。約束事みたいなものを、丁寧に時間をかけて、できるようにさせていきたい」(松田国調教師)
ダイワスカーレットのデビュー前も、ゲートに時間をかけたのはもちろん、「放っておけばマイルまでの馬になる」気性をなだめなだめ調教していた。松田国調教師がダイワウィズミーにGI4勝の名牝の面影を感じたからこその方針転換とみていいだろう。
超良血馬ともなれば、期待ばかりが先走りしがちだが、ベテラン松田国調教師ともなれば、何度となく乗り越えてきたこと。久しぶりに自身の手元に“帰ってきた血統馬”はじっくりと、確実に母のたどった道を歩んでいくことになりそうだ。