ゴールド大出遅れを語った根本師の印象深い言葉/トレセン発秘話
◆「競馬の醍醐味を見せてこそGI」
週明け火曜(6月30日)の美浦トレセンは、上半期ラストのGI宝塚記念(28日)の出来事で持ち切りだった。話題の中心はむろん2秒の出遅れ&15着惨敗を喫したゴールドシップだ。
「馬券を買ったお客さんはかわいそうだが、あれじゃどうしようもないよな」と諦観したものから「ああなるとサラブレッドは危ない。次のレースもまたやりそう」と今後を危惧する声まで聞かれたが、耳に残ったのは元ジョッキーである根本康広調教師の言葉だ。
「ゴールドシップが入ってから他の馬がゲートインするまで随分時間がかかってなかったか? 俺らの時代は、GIの主役にはゲートでもある程度気を使ったものだけどな。はたから見てても変な胸騒ぎはあった」
VTRで再確認すると、ゴールドシップが入ってから全馬がゲートインするまで約1分。今春の日本ダービー(18頭立て)と比較して、2倍近い時間がかかったことに気が付いた。直近までおとなしかった主役が発走間際にソワソワし始めたことを思うと、他馬の入りがスムーズなら違った結果となった可能性もあろうか。
もっとも前走・天皇賞(春)でゲート入りをゴネて、他馬を3分以上待たせたのが他ならぬゴールドシップ。他陣営が文句を言われる筋合いはなかろうし、当時騎乗した騎手たちからすれば「気を使う? 冗談じゃない」の気持ちだったかもしれないが…。
「メリーナイス(87年有馬記念)で落馬したオマエが語るなって言われるかもしれない(笑い)。ただ、競馬の醍醐味を見せてこそGIと思うんだ。なぜこういうことが起きたのか? 正解は出なくとも検証する意義はあるはずだし、それが競馬に携わる者の誠意ではないか」(根本師)
揺るがないのは、ゲートという“関門”が発走わずか2秒で120億円の15番絡みの馬券を紙クズとし、競馬のスリリングさを奪ってしまったという事実だろう。「これも含めて競馬」なのかもしれないが、グランプリとして楽しめる代物でなかったのは確かである。
皐月賞の競走中止を最後に引退したラガーレグルスを筆頭に、イジゲン、ルーラーシップなど、ゲートで可能性を潰した素質馬は数多い。日本でも「ゲートボーイ制」採用が可能か否かは分からないが、より魅力ある競馬とするために何をすべきか。その答えを主催者JRAとともに模索していけたらと思う。
(美浦の宴会野郎・山村隆司)