◆「ここをステップに香港に」
先週金曜(25日)、雨中の美浦ウッドでウキヨノカゼがハードな1週前追いを済ませた後、馬場から引き揚げてきた菊沢隆徳調教師がこう言い放った。
「胸を借りるとか、腕試しなんて言わない。勝負する気じゃなきゃ、GIに挑む意味がないから」
これは当方にすれば「衝撃」の2文字。というのも、GIIIキーンランドCの時に「重賞でどこまでやれるか試金石でしょう」と至って慎重だったトレーナーから、こんなセリフが飛び出すとは想像もしなかったからだ。この劇的な姿勢の変化には、おそらく強烈な前走Vが影響しているのだろう。
「ペースが落ち着いたところでシンガリから一気にティーハーフの前へ。コーナーで外を回らされたくなかったと四位ジョッキーは言っていたけど、あれで33秒5の上がりを使うのだから大したもの。GIで同じ競馬ができればすごいけど、今回は直線に坂もあるし、セオリー通りでいいのかな」
同馬がまれに見る“洋芝の鬼”だった可能性はある。ただ、芝6ハロンは2戦2勝と底を見せておらず、前走の再現シーンがないとは言い切れない。
一方、サクラゴスペルを送り出す尾関知人調教師も、1週前に興味深い言葉を口にしていた。
「レーザーバレットが7歳で重賞初制覇(23日の浦和オーバルスプリント)したように、馬によって成長度合いは異なるのでしょう。春は使い続けながら重賞を2つ勝ってくれたように、ゴスペル自身も今年になって体がしっかりし精神面の成長を見せてきた。ここをステップに香港に行きたいので、アピールできる走りができればいいですね」
大一番を前にしても、決して臆することのない両陣営。両トレーナーの雰囲気から察すれば、今年のスプリンターズSも実情は大混戦なのかもしれない。週末の空模様も下り坂とあれば、3連単19万円超の昨年以上に荒れても不思議はない? 週末までに“第2のスノードラゴン(13番人気)”を探す楽しみは、たっぷり残されている気がする。
(美浦の宴会野郎・山村隆司)