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岩田VS戸崎!地方出身騎手の短距離盟主争いと4歳馬と波動砲チャンス

  • 2015年10月01日(木) 12時00分


先週のコラムで、キタサンブラックの適性というより、オーナーの北島のサブちゃんの適性を考えると、キタサンブラックが勝つべき舞台は菊花賞ではなく有馬記念ではないか? と書いた。

やっぱりサブちゃんは、大つごもりに唄い上げるのが一番と思ったからだけど、その意見に血統ビームの亀谷クンも賛同してくれた。

だからすかさず聞いてみた。どうなの? キタサンブラックは有馬に勝てる?
「いやぁ〜それはわかりませんけど、でも唄うなら有馬記念の日はいいですよねぇ〜。まつり、いいじゃないですかぁ〜」。

「それはわかりませんけど」のフレーズが出たときは、たいてい別に狙いたい馬がいるときだ。経験上そうだ。ただチャンスが微塵もないときには、そういう賛同はしない。
だから決めた! チャンスはある。やっぱりキタサンブラックには菊花賞ではなく、有馬を勝っていただこう。

それはさておき、スプリンターズSだ。

今年のメンバーをパッと拝見して、サッと頭に残ったのは2頭+2頭。

ウリウリ 藤原英
ストレイトガール 藤原英
ベルカント 4歳
ミッキーアイル 4歳

藤原英厩舎の2頭と4歳の2頭。
セットで書くと意味ありげだけど、予想人気を見ると、この4頭で上位人気を形成しそうで、ただただ人気のある4頭が無意識に脳裏をかすめただけかもしれない。

でも目標のG1に向かって、馬を仕上げてくる藤原英厩舎の馬は気になるし、馬券圏内率の高い4歳は気になる。
隊列的にも、
2〜3番手 ミッキーアイル
3〜5番手 ベルカント
7〜8番手 ストレイトガール
10〜12番手 ウリウリ
と予想でき、あまりポジションでやり合う感じもなく、つまりこの4頭で一番流れの向いた馬が1着しそうな気もする。

気はするけれど、スプリンターズSはG1だ。G2やG3とは違う。枠順や馬場でも変わってくるはずで、全馬が理想的なポジションで走れるとも思えない。しかも今年は例年より一発を虎視眈々と狙っている陣営も多そうだ。

だから別の角度で見てみる。
アプローチの材料は去年使用した「ほとばしる前向きさ」だ。

去年は、
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スプリンターズSは地方出身騎手か外国人騎手を軸にすれば、だいたい当たる
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として、
戸崎(ハクサンムーン)と岩田(ストレイトガール)の地方出身者二人による短距離盟主争いという結論になった。

結果は、
1着 大野(スノードラゴン)
2着 岩田(ストレイトガール)
3着 田辺(レッドオーヴァル)
13着 戸崎(ハクサンムーン)
で、
2人気の岩田(ストレイトガール)が2着して、「地方出身者か外国人騎手を軸にするとだいたい当たる」ことは証明され、岩田vs戸崎の対決にも岩田が勝った。

ちなみに過去はこんな感じだ。

14年 2着 岩田(ストレイトガール)
13年 1着 岩田(ロードカナロア)
12年 1着 岩田(ロードカナロア)
11年 2着 安藤勝(パドトロワ)
10年 1着 ライ(ウルトラファンタジー)
09年 2着 安藤勝(ビービーガルダン)
   3着 小牧太(カノヤザクラ)
08年 2着 岩田(キンシャサノキセキ)
   3着 安藤勝(ビービーガルダン)
07年 該当なし
06年 1着フォード(テイクオーバーターゲット)
05年 1着コーツィー(サイレントウィットネス)

07年は、該当なしだから、それを省くと過去10年ではすべてで地方出身者か外国人騎手が連対していることになる。
地方出身騎手と外国人騎手で軸はだいたいだ。だいたいにもほどがある。

その理由を、地方騎手や外国人騎手のビッグレースでの前向きさに求めてみた(馬が強いのは言うまでもないし、騎乗技術があるのも言うまでもない)。
結局、スプリンターズSは、道中10番手より後ろにいては、好走は出来ても、1着にはなれない。自分の競馬や将来を見据えた競馬が10番手より後方の差し・追い込みでは脚質的に勝負にならない場合が多々あるわけだ。

前向きさゆえにいつもより前に行きすぎて、2着に敗れるときや、前向きさゆえにいつもより少し後ろに下げて、届かず2着のときもある。でも2着なら上々だろう。ここで言いたい前向きさとはただ積極的に騎乗するということだけではない。勝つためにいつもと違う騎乗ができるという前向きさでもある。

いつもと違う騎乗は、負けたときに叩かれるリスクを背負う競馬でもある。つまり、リスクを冒す覚悟みたいなものが、ここぞというときの地方出身騎手や外国人騎手にはあるのでは…と思うわけだ。

では、今年はどうか? 予想人気順に記すとこうなる。

予想1〜4人気
ウリウリ 岩田
ストレイトガール 戸崎
予想10人気前後
リッチタペストリー ルメール
コパノリチャード Mデムーロ

おっと、こちらでも岩田と戸崎が出てきた(わかっていたことですけど)。
去年と同じように人気的にも対決感が出ている。
どちらも藤原英厩舎の馬で、よりいっそう盟主争い感もあるような気がする。

逆に外国人騎手は人気がなさそう。
ルメール、Mデムーロが騎乗するのに10人気前後というのは通常ならばもっと人気がなくてもおかしくないってことだ。

リッチタペストリーは、去年度のシーズンは4戦すべて外国競馬だった。遠征には慣れてそうで、怖いっちゃー怖い。香港の馬はスプリント指数のベースが高く、ここでも当然警戒は必要なはず。さらに日本の競馬を熟知しているルメール鞍上も心強い。ひじょうに気になる。

ただし一昨年のロードカナロアが1:08:2で勝った12月の香港スプリントで、リッチタペストリーは1:09:2で6着だった。その後も香港では1分8秒台で走れてない(条件クラスのときに一度だけ1:08:1で勝ったことがある)。
去年の12月の香港スプリントで、ストレイトガールは初遠征、初香港馬場で、1:08:7で走り3着したことを思うと、ホームの日本でストレイトガールがリッチタペストリーに負けることは想像しにくい。

ルメールが騎乗を快諾するということは、なにか光るものがあるかもしれないけれど、ルメールが最大限上手く騎乗しても3着が精一杯ではないか? エアロヴェロシティのような強さは芝ではないように思える。だとすると、雨待ちか? 雨で1分9秒台の決着になればまだわからない。

雨待ちといえば、コパノリチャードもきっとそう?
左回りはふくれがちで、上手にコーナーを回れないと言われるコパノリチャードが左回りの高松宮記念を勝てたのは雨で馬場が重くなって、膨らまなかったのがよかったと思っているけれど、その後のリチャードを見ていると、左回り、右回り関係なく1分8秒台では走れない馬にも思えてきた。良馬場でも1分9秒台ばかりだからだ。

前々から言われていたようにコパノリチャードは本質的には1200ホースではなく、1400の先行馬かもしれない。Mデムーロは特別な存在で、コパノリチャードの全能力を引き出すかもしれないけれど、G1の1200を勝つスピードまでも引き出すことができるのだろうか?
先週の中山(Cコースに替わった)の芝1200は、1600万条件の良馬場で1:07:9、500万の稍重で1:08:9だった。
となると、やっぱり欲しいのは雨か。1分9秒台で勝ち負けできる馬場だろう。

二人の外国人名手の騎乗馬の理想が時計の掛かる馬場だとすると、現状ではなかなかその期待はできそうにない。
つまり、今年も岩田と戸崎の対決にスポットを当てていい(?)。そんな結論に達してしまった。

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岩田と戸崎、ウリウリとストレイトガール
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セントウルSのときにウリウリは「外枠に入ったら危うし」と書いた。
理由は、ウリウリは馬群をこじあけて鋭い伸びを見せる馬で、外からだと伸びが鈍る馬と思っているからだ。外枠だと外に回さざるをえなくなって、伸びても案外な伸びで終わると思っているわけだ。

だからウリウリが大外枠(16番)に入ったのを見て、ちょっとほくそ笑んだ。いくらいつの間にか内に潜り込むのが上手い岩田でも、短距離のフルゲートの大外では最後方に下げてからでないと内には潜りこみにくいから、それをしたとしても開幕の馬場ではそこから差すのは難しいはずで、勝ち負けは難しいと思ったのだった。

しかし、岩田はそれをやった。出遅れ気味に出て(あえてだと思っている)、すぐさま内を追走し、直線では中から馬群を縫うように猛然と追い込んで、ハナ差の2着。もうあっぱれとしかいいようのない凄まじい騎乗だった。でも、同時にやっぱりウリウリは外ではなく、馬群の中から追い込んだ方が切れる馬だということもわかった。岩田の覚悟を決めた騎乗が雄弁にウリウリを語っていたと思っている。

岩田は先週のヌーヴォレコルトでも内にこだわりにこだわっていた。ヌーヴォは内に入ったら走るとしたけど、実際(2着だけど)走った。ウリウリが1200路線に変更されると同時に岩田が騎乗するようになったのもただの巡り合わせではなく、藤原英師の狙いではないか? だとすると今回もウリウリの闘志を引き立てるような騎乗を依頼するかもしれない。

大外枠でも馬群をこじあけて、ハナ差2着させるのだから、もはやスプリンターズSではどの枠に入ろうがウリウリは走る、と思いたいけれど、今回も外枠に入ったらどうだろう? 同じように最後方から進んで、同じようにスペースが生まれるとは思いにくい。CBC賞のときも道中10番手以後で進んでいたけど、内がガラリと空いて、岩田はそこを突いた。

1200を走るようになって、道中の位置取りは10番手以後だ。スプリンターズSでは10番手以後の馬は2着や3着はあっても、1着はなかなかできない。そこを岩田の前向きさで補えるか? それをするのが岩田かもしれないけれど、自分は中山では難しいと見立てている。

現在2走続けて、道中10番手以後の競馬をして、内にスペースが空いた。3戦連続で後方から追い込むスペースが生まれるのか? 人気がなければそこに賭けるのはありだけど、1、2人気を争う馬だと、ちょっとリスキーだ。
ということで、ウリウリはたとえ内に入っても、ここ2走のような鮮やかな追い込みは難しい! つまって3着か4着…場合によっては5着もあり! 

それならば秋2戦目のストレイトガールの方が位置も取れるだけに有利ではないか。戸崎がオーシャンSで1着したサクラゴスペルのような騎乗(道中8〜10番手)をすれば、ここでも勝ち負けじゃないか!?

あれ? 戸崎ストレイトガールはずいぶん短くなっちゃったな。
でも他にストレイトガールで書き残しておくべきものも見つからない。

1200のG1で2着する馬が、牝馬戦ながら1600のG1を勝った。そして香港で3着。ややスケールの小さいロードカナロアみたいだ。休み明けのセントウルSをロードカナロアは2着して、きっちりスプリンターズSを勝った。ストレイトガールは前走のセントウルSを4着した。ロードカナロアと似てるけど、少し弱い感じだ。でも、今のスプリント界なら、なんとかなっちゃうんじゃないか。ちゃんと8番手の競馬で4着できた。サクラゴスペルのような、いやロードカナロアのような競馬をする準備はできているのではないか?

というわけで、今年の地方競馬出身騎手によるスプリント競馬の盟主争いは戸崎に軍配が上がると見た。

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スプリンターズS注目馬
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軸候補 ストレイトガール
4歳  ベルカント
4歳  ミッキーアイル

一泡吹かせてやろうと虎視眈々の陣営がいっぱいいそうと書いたけれど、中心を担うのはこの3頭になってしまった。2頭の4歳馬はどちらも気性的に引っかかりやすい馬。そういう馬にとっては、アクティブミノルとハクサンムーンというペースをあげてでも逃げにこだわる馬がいるのは絶好だ。 たとえ2頭がやり合わなくても、いいペースで逃げる馬たちだから、レースはしやすいはず。

3〜5番手につけて、直線で先頭、番手馬を交わす。交わしたところをストレイトガールが襲いかかる。ストレイトを凌げるか、ストレイトは前を交わせるか。
それが基本フォーマット。

あとはこのフォーマットが少し乱れて、別の馬が食い込んでくるか。
ハクサンムーンはまだ見限れないと思っているけれど、きっとそこそこ人気だろう(予想6人気)。
できれば人気のないとこが望ましい。

★レッドオーヴァルで足りないか?(予想13人気)
暮〜春にかけて不振だったけれど、夏になって、少しずつデキが上がってきているように思える。
前走のキーンランドも後手に回って、直線で踏み込むのが遅れてしまっての5着に見えた。
去年も夏競馬でデキを上げて、キーンランドで2着して、スプリンターズSで3着した。キーンランド2着、5着の違いはあれど、デキが上向いているのなら、まだ見限れないはず。

もちろん雨が降って、1分9秒台の決着になりそうだったら、ルメール&Mデムーロ騎乗馬に注目する。

おまけ
オッズ視点によるバズーカポイント(旧オバケポイント) 単150〜160倍台の馬

スプリンターズSでは、ときどき単150〜160倍台の馬が好走する。この10年で4頭が該当し(4頭しかいない)、3着、4着、3着、18着。タガノバスティーユ(168.7)もマヤノリュウジン(159.8)もそこにいた馬だった。馬券圏内は50:50。掲示板好走は4分の3。人気を考えれば、拾う価値ありだ。
自分はこのゾーンをバズーカではなく、波動砲と呼んで、打ち込むチャンスが訪れることを待っている。
予想オッズでは、フラアンジェリコ、スギノエンデバー、リトルゲルダあたりが怪しい。

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競馬専門誌・競馬王の元本紙予想担当。今は競馬王その他にて、変な立ち位置や変な隙間を見つけて、競馬の予想のようなものを展開中のニギニギ系。 著書はなし。最新刊「グラサン師匠の鉄板競馬 最前線で異彩を放つ看板予想家の鉄板録」に再び間借りして、4年ぶりに全重賞・根多の大百科的なものを執筆。

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