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◆「直線で一回くらいは名前を呼ばれろ、と丸田には言ってある」

　秋華賞に出走するホワイトエレガンスが栗東滞在で急上昇している。

　先週の美浦でこんな噂が耳に飛び込んできた。管理する国枝栄調教師といえば、アパパネ(阪神JF、桜花賞、秋華賞)を筆頭にマイネルキッツ(天皇賞・春)、ダノンプラチナ(朝日杯FS)など、関東屈指の実績を誇る“栗東滞在の魔術師”。かつては「すべての調教師が東西で半々にキュウ舎を持てばいい」と提唱したほど栗東施設への意義を見いだしており、今回も何かマジックが仕掛けられたか…。気になって担当の田村亮平助手に電話をかけると、思わぬ事実が判明した。

「ここに来てすごく良くなったという意味では急上昇なんでしょうが…。実は栗東に着いてしばらくが最悪の体調でした。過去の滞在馬同様にさっそく坂路や逍遥馬道での調整を取り入れたのですが、馬はそのストレスから下痢が止まらず、体重も10キロ以上落ちてしまった。すぐさま美浦と同じくフラットコースの調教に戻して、心身を立て直したというのが実情です。今ではかかるくらい馬がやる気になっているし、1週前は併せたディープジュエリーを問題にしなかった。確かに当初に比べれば急上昇ですが、リバウンドに成功した形ですからねぇ」

　こう言って電話口で苦笑(多分)していた。とびきりの秘話を期待していた当方はズッコケそうになったが、夏の疲れが尾を引き“赤信号モード”だった前走・紫苑S(2着)と比べればトーンははるかに明るい。「平坦内回りの二千は理想のコース形態。直線で一回くらいは名前を呼ばれろ、と(主戦の)丸田には言ってある」と最後は静かな闘志も見せた。

　とはいえ、指揮官の国枝調教師は大一番を前に思いのほか冷静だ。

「しばしば夏の上がり馬が台頭する菊花賞と、秋華賞じゃ“毛色”が違うからな。牡馬に比べて完成時期が早い牝馬が、春の序列を覆すのは相当難しいし、急上昇などなかなかない話。ひと泡吹かせたい気持ちは当然あるが、まだ実績馬の胸を借りる立場だし、気楽に臨むよ」

　素直に師の論調に従えば、無理に穴を狙わずローズS2着ミッキークイーン、4着レッツゴードンキらGI馬の巻き返しを狙うのが正解なのか…。各馬の追い切りをしっかりチェックし、最終結論を出したい。
(美浦の宴会野郎・山村隆司)