(撮影:高橋正和)
オーバーペースの前走がいい刺激に
JBCクラシックに連覇が多いのはすでに知られるところだが、今回も3番人気のコパノリッキーが制して、昨年の盛岡開催からの連覇となった。15回の歴史でその約半数の8頭しか勝ち馬がいないというレースもめずらしい。アドマイヤドンが大井で2勝している以外、2連覇、3連覇はいずれも異なる競馬場ゆえ、コースに対する適性が味方したということでもない。加えて武豊騎手には7勝目という記録になった。
日本テレビ盃が、抜けた人気となったコパノリッキーとクリソライトが意地を張り合うように競り合ったのとは対照的に、今回はお互いが出方をうかがい、ほかに行く馬がないと見て外枠からハナを取りに行ったのがコパノリッキーだった。最内枠のクリソライトの川田騎手もコパノリッキーの出方をうかがっている様子だったが、一瞬行く気を見せたサミットストーンが内に切れ込んできため被される形になり、クリソライトは行こうにも行くことができず。それでコパノリッキーは楽に単騎でハナを切ることになった。
コパノリッキーが刻んだ1000mの通過62秒7というペースは、大井2000mのこのクラスのレースとしては明らかなスロー。そして後半1000mのラップは、12.4 - 12.3 - 12.1 - 11.8 - 13.1というもの。前半に溜められたぶん、徐々にペースアップして後続に脚を使わせて逃げ切った。
骨折休養明けの前走日本テレビ盃が、クリソライトと競り合って直線バッタリというレースだったコパノリッキーは、2着のクリソライトから7馬身も離されていただけに状態が心配された。しかしそのオーバーペースは、むしろ休養明けのいい刺激となったのではないだろうか。
注目のホッコータルマエは、日本テレビ盃で人気馬が共倒れとなっていたこともあって、帝王賞以来の休み明けでも単勝1.4倍の断然人気。しかしいつもの走りは見られなかった。
ホッコータルマエの安定した強さは、ペースが速いと思えば控えることもできるし、逆に行く馬がいないと見れば、ハナをとってみずからペースをつくることができるところにある。しかし今回は絶好のスタートを切ったにもかかわらず、スローペースを控えて5番手からの追走。向正面に入ってクリソライトの直後3番手に位置取りを上げたが、めずらしく行きたがるような場面もあった。このあたりが、休養明け、仕上がり途上だったということなのだろう。3コーナーでクリソライトを交わして単独2番手に位置取りを上げたが、前を行くコパノリッキーとの手ごたえの違いは明らかで、すでに勝負はついていた。しかも最後はサウンドトゥルーにまで交わされての3着。ただこれがホッコータルマエの実力でないことは明らかで、チャンピオンズCにはあらためてGI/JpnI・10勝という日本記録更新の期待がかかる。
2着のサウンドトゥルーは、前走が漁夫の利的な勝利と思われたが、しかしそれだけではない、長く使える確かな脚があることを今回あらためて示した。レースの上り3F(すなわち逃げ切ったコパノリッキーの上り3Fでもある)が37秒0だったのに対し、サウンドトゥルーはメンバー中最速となる36秒7。4コーナーではホッコータルマエから4馬身ほどの差があっての6番手あたりから逆転した。ロングスパートから差し切った日本テレビ盃のレースぶりと合わせても、スタミナ勝負で力を発揮するようだ。今回が初めての2000mだったが、今年引退したシビルウォーのようなタイプで、ひょっとするとさらに距離が長くてもという可能性が感じられる。
4着のクリソライトは、正直、どんな条件で力を発揮するのかという判断が難しい。
地方最先着は5着のハッピースプリント。ホッコータルマエを前に見る位置を追走して、最後は伸びを欠いたホッコータルマエと脚色が一緒になってしまった。昨年の東京大賞典以降GI/JpnIのみを7戦して、3着2回、4着2回、5着1回。掲示板に載れなかったフェブラリーS、南部杯も含めて、勝ち馬からの差は1.4秒以内と、崩れることなく善戦はしている。ただGI/JpnIを勝ち切るには、もう一段階のパワーアップが必要のようだ。