女王メジャーエンブレム打倒へ レッドアヴァンセ音無師の試行錯誤/吉田竜作マル秘週報
本番へ直行というローテーションは悪くない印象だが「調教ではできることに限りもある」
今月いっぱいで栗東では武田、橋口弘、松田博調教師が引退となる。当コラムでよく登場していただいたのはご存じ、松田博調教師だ。学生のころは「馬」を追いかけるのがやっとで、「人」のことはさっぱり。今から21年前に仕事でトレセンへ通い始めるようになった当時は、松田博調教師の顔も漫画で描かれているものでしか認識がなかった。取材の仕方や服装などで怒られたことから、ボートレースやパチンコなど競馬以外の話でも盛り上がったり…水曜と木曜の調教スタンドと厩舎の往復を“お供”する間の思い出は書き尽くせるものではない。
生まれたばかりの当歳を見に行き、その成長を見守りながら将来の青写真を描く…といった調教師本来の仕事がなかなかできない環境になっている昨今。表向きは「生まれたばかりの当歳を見て何がわかるよ」と言いつつも、実際には毎年のように管理予定の当歳馬を見に行っていたことを知っている。弱そうなところや心配なところをいち早く見つけ、調教が進むにつれてそこがどうなるかに気を配り、入厩後の調教にフィードバックし続けてきたこともよく知っている。そうした行動をそばで見てこれたのは記者冥利に尽きるというか、POGネタを主に扱う当コラムにおいても、何物にも替え難い財産となった。
もし、当コラムがPOGで何らかの役に立っているのだとすれば、まさに師匠である松田博調教師のおかげ。
言葉ではとても足りないが、それでもこの場を借りて「ありがとうございます」と言わせてもらいます。
先週の小倉大賞典ではアルバートドックが最後の重賞Vを飾ってくれた。最終週は3歳未勝利馬3頭(アルーリングハート、スマートアンカー、タガノジーニアス)が出走予定。どれかがはなむけの勝利を飾ってくれれば…。
感傷にふけってばかりはいられない。「牝馬のマツパク」去りし後の牝馬クラシック戦線の話題を。先日のクイーンCでは2歳女王メジャーエンブレムが3歳初戦を飾った。タイム、内容ともに文句なしで、牝馬の有力候補を抱える陣営にも大きな“脅威”を改めて与えたようだ。その一人がレッドアヴァンセを管理する音無調教師。エルフィンSを快勝した後の次なる一手に、メジャーエンブレムの存在が大きく影響を及ぼすことに…。
「桜花賞までは間隔があるからね。チューリップ賞を挟むか挟まないかで迷うけど、メジャーエンブレムが強かっただろ? あれと戦うためには、レースを使って鍛えた方がいいのかもしれない」
エルフィンS勝利後、本番へ直行というローテーションは11年マルセリーナが勝利、09年レッドディザイアも2着と悪くない印象だが、「調教ではできることに限りもある」。“このままではいけない”という危機感が音無師をチューリップ賞出走に傾けさせている。
一方で、重くのしかかっているのが新馬、未勝利戦の2連敗で「無駄に2走してしまった」。間にチューリップ賞を挟めば、デビュー6走目で桜花賞を迎えることになる。その先にNHKマイルCやオークスも控えていることを思えば、できるだけ消耗を避けたいところで、そう簡単に踏み切れるものでもないのだ。
キャリアをさらに積むことで切れ味を磨くか、出走数をセーブさせることを優先させるか。「木曜(25日)の追い切り後に決めたい」と話す音無師の最終決断はいかに!?