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クリソライトが馬場を味方にスローに持ち込んでの完勝/ダイオライト記念

  • 2016年03月10日(木) 18時00分

(撮影:武田明彦)



ますます確かになった船橋得意説

 GI、GII(GにはJpnも含む、以下同)で勝ち負けという実績・人気ともに断然の馬が実力通りのレースぶりで快勝、GIII〜中央オープン級の2番手グループが2着3着を争い、ほとんど実績のない馬たちが下位を占めたという、1週前に行われたエンプレス杯と同じような質のレースだった。中央勢が掲示板を独占したエンプレス杯と違い、今回は南関東所属馬が3、4着に入ったが、それにしても3着のユーロビートは昨年JpnIIIのマーキュリーCを勝っていたし、人気のなかったクラージュドールも昨年中央準オープンを勝ってオープン特別でも5着があったという成績なら、GIIIクラスの馬と互角のレースをしても不思議はない。ほぼ実力通りに決まったレースと言ってしまえば、それで話は終わってしまうのだが……。

 断然人気のクリソライトを含め先行タイプの馬が何頭かいて、果たしてフライングぎみの好スタートを切ったのはクリノスターオーだった。前走佐賀記念では地元のキョウワカイザーと競り合い、1周目スタンド前の直線に出てようやく相手にハナを譲ったが、今回は相手の格が違うからか、様子をうかがいながらクリソライトを先にやり、サミットストーンも続いて、クリノスターオーはすんなり3番手に控えて隊列が決まった。

 1周目の3コーナー過ぎでは、クリソライトと2番手サミットストーンの差が3馬身ほど、3番手のクリノスターオーはさらに3、4馬身と差が開いて、単騎逃げとなったクリソライトはペースを落とせるだけ落とした。それが4F目から8F目まで、1周目の4コーナー手前から、2周目向正面の半ば過ぎのあたりで、13.3- 13.5- 13.6- 14.2- 13.3 というラップを刻んだ。昨年のダイオライト記念当日と同じ不良馬場でも実際の馬場状態はまったく違うもので、今回は水が浮くほどの不良馬場。条件戦のレースでの比較から昨年より1〜2秒ほど時計がかかる馬場だったにしても、クリソライトにはいかにも楽なペースだった。

 3〜4コーナー中間あたりではクリノスターオーが半馬身くらいまで差を詰め寄る場面もあったが、道中ずっと楽にレースを進めていたクリソライトにしてみれば、相手に来られたぶんだけ離せばいいだけのこと。最後はクリノスターオーを1馬身半差で振り切って連覇となった。勝ちタイムの2分36秒4は、昨年より2秒8も遅く、過去10年でももっとも遅い勝ちタイム。2分36秒台の決着は2005年にパーソナルラッシュが勝ったとき以来だった。

 ダートでは通常、馬場が湿るとタイムが速くなるが、水が浮くほどの馬場になると逆に遅くなる。今回は、そうした馬場状態で時計がかかったこともあるが、ほとんど他馬に競りかけられなかったクリソライトが楽なペースで逃げたこともあって時計のかかる決着となった。

 2着のクリノスターオーは、ときに、2走前のチャンピオンズC、前走の佐賀記念のように、譲らずハナ争いの手に出て早めにバテてしまうこともあるが、今回は無理には競りかけず、すんなり控えたことで、クリソライトに次ぐ実績どおりの結果となった。

 3着には5馬身離れて大井のユーロビート、4着にはさらに4馬身離れて、中央から船橋に転厩2戦目のクラージュドール。前残りで着差が開いてという、典型的な水の浮く不良馬場での決着だった。

 1、2着は実力を発揮しての結果だが、それ以外で見どころがあったのは、3着のユーロビートだ。5、6番手を追走していたマイネルバイカ、ストロングサウザーが、ペースアップした3コーナー手前から手綱を動かしても前との差を詰められなかったのに対し、その2頭のうしろを追走していたユーロビートは抜群の手ごたえで位置取りを上げていった。さすがに直線では前2頭との差は詰まらなかったが、3着以下の中ではレースぶりが際立っていた。昨年のマーキュリーCではレース中盤で一気にまくって6馬身差の圧勝となったように、今後もGIII級が相手ならチャンスはありそうだ。

 単勝105.1倍の7番人気とまったく注目されなかったクラージュドールだが、今回はクリノスターオーの直後4番手の位置取りから流れ込んでの4着。5着マイネルバイカ、6着ストロングサウザーとともに、上り3Fがまったく同じ40秒0で、この3頭の着順・着差は、水の浮く馬場状態ゆえ、道中の位置取りがそのまま結果となった。

 さて、勝ったクリソライトは、3歳時にジャパンダートダービーを勝って以降に挙げた勝ち星3つは、すべて船橋のJpnII。ますます船橋得意説が確かになったようにも思える。とはいえ、復活のきっかけとなった一昨年のマーキュリーCでも2着があり、その後、船橋以外で出走したレースはすべてGIだった。必ずしも船橋が得意というわけではなく、単に、ダート2000m前後の舞台でGII、GIIIクラスの相手なら確勝だが、一線級が顔を揃えるGIとなると上位争いまで、という可能性も考えられる。個人馬主の馬であれば、地方の裏街道的なダートグレードで確実にタイトルを狙うという使い方もありそうだが、クラブ馬主の馬だけに、これほどの実績があってGIを避けて通るというわけにもいかない。帝王賞でホッコータルマエに3/4馬身差で2着というレースを見せられれば、やはり条件の合うGIは使っていくということになるのだろう。

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1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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