◆2016年クラシックに縁のない厩舎の方が新たなシーズンへの準備も当然早くなる
先週の続報から。ルイ(牡=父Into Mischief、母Tipsy At Midnight)に続き、ロードバレット(牡=父Malibu Moon、母Ravish Me)、リンクスゼロ(牡=父アドマイヤマックス、母チャメ)と、2歳馬3頭がゲート試験をクリアした森厩舎。これに続いて先週新たにマテラフィールド(牡=父ステイゴールド、母アンリーチャブルスター)、Satans Quick Chickの14(牡=父War Front)が入厩した。
マテラフィールドは「馬房の前を通っただけで立ち上がって威嚇された。うるさそうだね」と木下助手は苦笑いしたが、それも元気がいい証拠。このままゲート試験に向けて一気に進みそうなムードだ。一方、外国産馬のSatans Quick Chickの14は「まだ調教も進んでいないみたい。このまま一度放牧に出ると思う」とのこと。ともあれ延べ5頭の2歳馬が入厩したのは栗東ではこの森厩舎のみ。「古馬が頼りないので、他に入れる馬がいないんじゃないの」と木下助手は冗談交じりに笑うが、“策士”森調教師が何の考えもなしに、2歳馬を大量入厩させるはずがあるまい。
森厩舎はゲート練習にかける時間が他厩舎と比べて非常に短く、入厩して1週間もかからず(ゲート試験に)受かることもザラ。本来ならこの時期に2歳馬を入厩させるのは、それだけ厩舎の稼ぎを減らすことにもつながるが、すでに放牧に出た冒頭の3頭のようにスタッフの高いスキルも手伝って、「入厩→ゲート試験合格→放牧」のスパンを短くすることを可能にしている。出走回数の落ち込みを最低限に抑えることで、厩舎の稼ぎに大きな影響を与えずに済ませているのだろう。
もちろん“外厩”との密な行き来は不可欠。近年の森厩舎を陰で支えているのが兵庫県の淡路島にある「awajiトレーニングセンター」だ。
淡路島は一年を通して温暖ではあるが、海に囲まれていることもあってか、真夏でもそれほど気温が上がらない。海水浴客だけでなく、避暑に訪れる観光客も少なくないくらいだ(ついでに言うと食べ物もうまい)。人にとって過ごしやすい土地はサラブレッドにとっても過ごしやすい。当初は交通の便、明石海峡大橋の通行料などがネックになって利用する厩舎は少なかったそうだが、現在は森厩舎の他に藤沢則厩舎、公営の園田、西脇の厩舎も利用している。穏やかな淡路島で2歳馬たちがすくすく育てば、森厩舎の2歳勢はPOG的にも要注意の存在となるだろう。
もちろん、ほかにも注目厩舎はある。桜花賞が終わり、今週は皐月賞となるわけだが、今のところ2016年クラシックに縁のない厩舎の方が新たなシーズンへの準備も当然早くなる。中でも注目は安田厩舎だ。
先週、メイトサン(牡=父ダイワメジャー、母ボシンシェ)とモンドキャンノ(牡=父キンシャサノキセキ、母レイズアンドコール)が入厩。メイトサンは「ちょっとカリカリしてるかな。(半兄の)グレンツェント(伏竜S2着)同様に気難しいところがありそう。ただ胴は長いし、芝も早い時期ならこなせると思う」と安田調教師。一方、モンドキャンノは胴が詰まった、いかにも“キンシャサ体形”で「牧場でも仕上がりがいいと言ってくれてましたし、ゲート試験をパスすれば函館へ」。
全体のラインアップを見ても安田厩舎の2歳馬はかなり期待が持てそう(詳細は5月12日発売の「ザッツPOG」で)。ぜひ、注目してもらいたい。