POGを“非社台系”で攻めたい方は福島厩舎に注目を!/吉田竜作マル秘週報
◆今の時流を逆手に取って乗り切っているキュウ舎の代表例が福島キュウ舎だ
牝馬、牡馬のクラシック初戦が終わり、次なるオークス、ダービーに向けた取材が始まる一方で、「ザッツPOG」の締め切りも目前に迫っている。普段の仕事にも全力投球の記者たちが、さらに回転数を上げて取材に執筆にと奮闘中ですので、何とぞしばらくお待ちください。鮮度と精度の高い情報をお伝えできれば――。
POGをたしなむ読者ならベテラントレーナーが続々と引退し、若い調教師が開業するにつれ、「社台グループ」への依存度が高くなっているのはもうご存じのことだろう。もちろん、キャリアのない若手トレーナーにとって、毎年のようにクラシックをにぎわす馬を供給する大牧場との接点は何よりの財産。いや、“ライフライン”と言った方がいいだろう。しかも素質馬、良血馬を預けてもらえるだけでなく、栗東ならば近隣の「ノーザンファームしがらき」を利用できるのが何より大きなメリット。効率良く、馬の入れ替えができるし、それによって出走回数も増やせるからだ。開業したてのキュウ舎にとっては賞金を稼ぐチャンスもそれだけ増えるし、放牧に出ている馬も充実した設備でしっかりと調整してもらえるのも大きい。
逆に引退があと10年を切っているようなキュウ舎の中には社台グループの馬が入ってこないところもある。こうしたキュウ舎の中には預託馬が集まらず、定年を待たずして商売を畳んでしまうところすらあるのだが…。一方で、いわゆる“非社台キュウ舎”でも、今の時流を逆手に取って乗り切っているキュウ舎が確かに存在する。その代表例が栗東の福島キュウ舎だ。
数年前には預託馬がかなり少ない時もあったが、今週のマイラーズCには6歳にして本格化ムードの牡馬テイエムイナズマを送り出し、4歳牝馬にはオープンで活躍中のナムラアン、さらには3歳牝馬にもダイアナヘイロー(エルフィンS2着、フィリーズR4着)と、稼げる馬を多数抱えるまでに“復活”している。この要因を福島調教師自身はどう分析しているのか?
「今のキュウ舎は使ってすぐ放牧ってなるだろ。馬主さんの中には“どうしてキュウ舎で鍛えてくれないんだ”って不満に思う人もいるんだよ。その点、ウチはキュウ舎に置いて、みっちり乗り込むから。常にキュウ舎にさえいれば、頭数の少ない時や出られるチャンスを見て使える。それで他所から転キュウしてくる馬もいるし、今年の2歳馬も二十数頭にまでなったんだと思う」
もちろん、ただキュウ舎に置いておけばいいわけではない。非社台=派手な血統馬がいない中でも、地道に結果を残してきたという大前提があったからこそ。裏を返せば、キュウ舎スタッフの尽力とトレーナーの機転がかみ合えば、“非社台キュウ舎”でも十分経営は成り立つ証しとも言えようか。
「(定年引退まで)もう長くはないからな」と笑う68歳のベテラントレーナーは、今年の2歳世代に相当な手応えをつかんでいる。
「竹園さん(テイエムのオーナー)に買ってもらったゼンノロブロイの牝馬(アリゲーターアリーの14)がいいんだよ。これが順調に育ってくれれば。それとナムラビクターの全弟(ナムラシンウチ=父ゼンノロブロイ、母ナムラシゲコ)。恐らくダート馬だろうが、堅実に走る血統だからね。ナムラさんといえば、ルーラーシップの牝馬(ナムラライラ=母カイテキセレブ)もいいな」
POGを“マニアック”に攻めたい方は福島キュウ舎の若駒たちに注目してほしい。