フローラSも蛯名 フロンテアクイーンに注目/トレセン発秘話
◆老舗キュウ舎ならではのしたたかな計算
今年はディープインパクト産駒、史上最高の当たり年。
波乱の皐月賞を見た後、以前自分で記したことを改めて思い出したのだから始末が悪い。
“初年度産駒がステイゴールド産駒オルフェーヴルに屈して以降、種牡馬ディープの悩みは古馬王者たる牡馬を輩出できずにきたこと。しかし、今年の3歳牡馬はスター候補がズラリ。ボージョレ・ヌーボーの例えではないが、ひょっとして史上最高の豊作ではないのか”
確か当欄にはこう記したはずである。
おそらく当時の感覚をそのままキープできていれば、ディープ産駒のワンツースリーで決まった皐月賞は易々と的中したことだろう。だが、諸所で心変わりするのが宴会野郎の最大の弱点。遅きに失した感はあるが、今年の3歳世代、常にディープ産駒の層の厚さを頭に入れて付き合っていく必要があるのだろう。
さて、今週から東日本の開催は中山から東京へ。オークストライアルのGIIフローラSから、クラシック第二幕が切って落とされる。本音を言えば、応援したいのは東スポ杯(7着)でも本命にしたアグレアーブル。岩田康誠が「ブエナビスタ級」と評する素質馬の完全復活を願っていたのだが、先週末の酒席では担当の磐井圭一助手の口調がどうにも重かった。勝負の流れに即せば、やはり2戦2勝のディープ産駒=ビッシュから入るべきなのか。
一方で“取材蓄積を大事にする”ことを重視すれば、父メイショウサムソン譲りの晩成型フロンテアクイーンも軽視はできない。クイーンC2着で賞金加算しながらも、陣営はオークス一本釣りをイメージして早々に桜花賞パスを決断。そこには老舗キュウ舎ならではのしたたかな計算がある。
「桜花賞でピークに持っていってしまえば、オークスをオツリなしで迎えることになる。競馬を使いながら変わってきた馬だけに、ひと息入ればまた良くなりそうな感じもあるしね。むろん強敵相手にチャンスがあるとすれば、息の長い末脚を武器にできそうな東京二四とも思うから」
国枝栄調教師が語る通り、この馬の武器はデビュー以後の成長曲線だろう。皐月賞馬ディーマジェスティが象徴するように「一戦ごとの変わり身」はクラシックを制するキーワード。好調の鞍上・蛯名を今週も注目だ。(美浦の宴会野郎・山村隆司)