「今が一番、競馬に乗っていて楽しい」と語る中井騎手が、今回選んだトークテーマは「自分の強み」と「昔の自分と今の自分で変化したこと」。デビュー当時は順調な勝ち星を挙げていた中井騎手ですが、3年目に状況が一変。「あの時の自分は驕りがあった…」と、反省も踏まえて当時を振り返ります。
(取材・文/大薮喬介)
トークテーマ:謙遜なし! 自分の一番の強みは?
――では、次のテーマです。話の続きで「謙遜なし! 自分の一番の強みは?」はいかがですか?
中井 先ほどのお話と重なるのですが、“競馬を楽しめていること”だと思います。今騎乗させていただいている馬は、攻め馬から乗って、スタッフさんたちと一緒に造り上げている馬ばかりなので、返し馬で初めて騎乗するジョッキーよりは、確実に自信を持って乗れると思うんです。それが今の自分の強みですかね。本当は、自信を持ちたくて攻め馬に乗っているのかもしれませんけど。
――自信を持って競馬に乗ることは大事ですよね。
中井 とはいっても、自分が思っていたことと違っていたりして、「何が違っていたんだろう」とレース後に考えることもよくあるんですよ。上手くいったり、上手くいかなかったりの繰り返しです。考えれば考えるほど、競馬って奥深いなと思います。
「自分の一番の強みは?」の問いに「競馬を楽しめていること」だと語る中井裕二騎手
――だから、余計に競馬が楽しいと思えるんでしょうね。
中井 やっぱり楽しんでいる人が一番強いと思うんです。悔いの残らないというか、少しでも楽しめるかというのが大事な気がしています。
――騎乗に関しての次のステップは考えているんですか?
中井 まだ言える段階ではないです。考えてはいますけど、まだそこまでいっていないので。実現できたら、言わせてください。
トークテーマ:昔と今の自分で変化したこと
――わかりました。では、次にいきましょう。
中井 「昔と今の自分で変化したこと」でお願いします!
――デビュー年は23勝、2年目は37勝しています。勝ち星だけを見れば、当時は順調でしたよね。
中井 デビュー年は、競馬に乗ることに精一杯でよくわかっていませんでした。2年目は…なんて言うんでしょう…。簡単に言えば、自分の腕を過信していましたね。馬主さんや所属していた長浜先生、厩舎のスタッフの方々に支えられていたからこその成績だったんですが、自分のことばかり考えてしまって…。それが結果に出てしまったのが、3年目だったと思います。
――3年目は、11勝にダウンしていますね。とくに8月末にフリーになった時からが顕著です。
中井 いろいろありましたけど、結局は自分が悪かったんだと思います。
――自信が、態度に出ていたんですか?
中井 態度には出ていないと思うんですけどね…。だけど、変わっていないつもりでも、レース前やレース後の言動に出ていたのかもしれません。あの時の自分は驕りがあったというか、今思えば考え方が子供でしたね。ただ、言い方は難しいのですが、自分がしてきたこと、自分のしてしまったことに対して後悔はしていないんですよ。それに気づいたからこそ、今の自分がいるわけですから。競馬に対しても、例えばスタートの話でいえば、2年目くらいまでは、自分の腕を過信して、“誰よりも先にスタートを切ってやろう”としか思っていなかったんです。だけど今は、誰かのスタートの技術を盗みつつ、それを活かしてスタートを上手く切りたいと考えるようになりました。
――周りが見えるようになったんですね。
中井 はい。そこが昔の自分と今の自分を比べて、一番変わったことだと思います。
――いつ「驕りがあった」ことに気づいたんですか?
中井 減量が切れて、騎乗馬の質がガラッと変わってからですね。そこで初めて、自分に騎乗依頼がきているわけではなくて、“減量があるから”騎乗させていただいたことに気づきました。これは若手騎手によくあることなんでしょうけど、見事にそれに陥ってしまいました。昔からなんですけど、僕は痛い目に遭わないと気がつかないんです(苦笑)。
「昔と今の自分で変化したこと」の問いについて一番変わったのは…
――減量はやはり効果があるのでしょうか?
中井 う〜ん、今の僕の考えがあった上で、3キロ減があったら馬が伸びるのかなとは思いますけど…。
――中井ジョッキーは今年減量が復活して、「☆」ですよね。去年と何か変化はありましたか?
中井 僕の場合は騎乗が増えたわけでもなく、減っているわけでもないので、とくに変化はないです。騎乗させていただいている各厩舎の方々も、「減量の中井で」ではなく「じゃあ、中井に」という感じですから。そう言っていただけて、すごく嬉しいですし、本当に感謝しているんです。
(文中敬称略、次回へつづく)