デビュー当初はなかなか結果が出ず、勝ちたい気持ちが強すぎて、追う時のアクションも大きくなっていたそうです。それが正しいと思っていたそうなのですが、ある人の喝により目が覚めたそうです。いったいその人物とは!?
(取材・文/大薮喬介)
騎乗フォーム研究中 追う動作を徐々に小さく
――騎乗フォームのトレーナーは聞いたことがありますが、レース分析をされているトレーナーは珍しいですね。
菊沢 僕からお願いしました。その方もレース分析をしながら、他の人に教えたことはないとおっしゃっていましたね。僕の場合は勝てない時期が長かったので、自分の考えだけでは足りず、客観的な意見が必要だと思ったんです。
――トレーナーをつけたのはいつ頃だったんですか?
菊沢 レース分析は初勝利をあげた1カ月前くらいで、騎乗フォームについては最近ですね。
――その初勝利をあげたレースはジョリガーニャントに騎乗していたわけですが、その前走も騎乗して2着でしたよね。前走も勝った時も同じ1枠で、外にふくれるのを我慢させつつ、内ラチぴったりにつけて逃げる競馬でした。
菊沢 僕が上手く御せなくて、どちらのレースも道中、動作が大きくなりすぎていましたよね。今だったら、もう少し楽に勝たせてあげられたのかなと思います。
――デビューの時と比べて、追う時の動作が徐々に小さくなっていますよね。
菊沢 はい。動作を大きくすることで結果を出している先輩方もいますが、僕の場合は逆に馬の邪魔をしていただけでしたから。ジョリガーニャントの前走にしても、追いつかれそうになった時に“何とかしないと”という気持ちが先走ってしまって、最後に大きなアクションになってしまって…。実際、次の勝ったレースでは大きな動作をしなくても勝てたわけですから、本当に邪魔をしていたんだなと思い知らされましたね。マイナスなことばかりをしていたので、今は馬の邪魔にならない、プラスになる騎乗を目指しています。
――それは誰かに注意されたりしていたんですか?
菊沢 横山典弘騎手に呼び出されて、「あの追い方は止めろ」と強く説得されました。普段は聞いてもそれほど多く語る方ではないのですが、その時が一番長く話したんじゃないかと思います。ただ、僕も意思を持ってその乗り方をしていたので反論したんですが、なぜダメなのかを丁寧に説明してくださって…。菊沢先生からも「あれは馬の負担になるだけだから止めなさい」と怒られまして、ようやく気づきました。結果、その翌週に初勝利をあげられたので、やっぱり自分が間違っていたんだなと。
――アクションの大きい追い方は、競馬学校の時からしていたんですか?
菊沢 そうですね。デビューする前はアクションが大きければ大きいほど、馬は動くんじゃないか、という考えでしたから。
――でも、トップジョッキーの中にはアクションが大きくて勝っている人もいるわけですから、試してみたくなりますよね。
菊沢 そういった方々は何年もかけて積み上げた基礎がありますし、それプラスのそれぞれの追い方を探求されているので、去年の僕とは違いますよね。やっぱりトップジョッキーのアクションの大きい追い方を見ていても、正しい重心の位置で追っています。
――大きなアクションをしていなければ、もっと早く初勝利をあげられたと思いますか?
菊沢 思います。でも、後悔はしていません。当時の追い方に戻ることはないですが、もし最初からアクションの大きな追い方をしていなかったら、そっちがいいんじゃないかって考える時がくると思うんです。実際、体を畳んでキレイに乗っているだけではプラスにならないこともあって、最近でさえ、もうひと押しが足りないと感じていました。今はきれいなフォームで、馬のプラスになる乗り方を取り組んでいるのですが、トレーナーさんに指摘されたことを修正したら、馬がもう一段ギアが上がるようになったんです。“これだ!”と衝撃を受けましたね。だから、今後も失敗することはあると思いますが、恐れずにいろいろなことにチャレンジしていきたいです。
恐れずにいろいろなことにチャレンジしていきたい
(次回へつづく)