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弥富トレセン

  • 2012年02月29日(水) 18時00分
 名古屋競馬場の所属馬は、名古屋競馬場から車で2〜30分のところにある弥富トレセンにお住まい。ここは伊勢湾に近い干拓地で、かなり広い敷地となっている。

 ちなみに昭和52年の春までは名古屋競馬場のなかに厩舎エリアも同居していた。その当時の写真には周辺に人家があまり写っていないが、現在の名古屋競馬場周辺は街のなか。今でも厩舎が競馬場内にあったら、周辺住民に排斥運動を起こされることになっていたかもしれない。そういう人たちの大半は、競馬場があることを知っていて住み始めたはずなんだけど。

調教時間を示す看板

調教時間を示す看板

 ともあれ、いま思えば先を読んだという形によって、厩舎エリアはまるごと移転することに。その結果、選ばれたのが「愛知県企業局が造成した干拓地」なのである。

「いやあ、昔は馬も人も多くて活気がすごくあったんですけれど、今はちょっとさみしい感じなんですよね」と、案内してくれた加藤利征騎手。

 つい十数年前までの厩舎団地はほとんど満室で、トレセン内にはスーパーなどもあったとのこと。今もその建物は健在だが、空き部屋、空き店舗が目立つ状況になってしまっている。

「昔はトレセン内だけで子供会ができるくらいだったのに、今は小学生が何人いるの? という感じですよ」

 静けさが支配するトレセンでそんな話を聞くとさみしさ倍増という気持ちになってしまうが、まずは調教コースから見学させてもらおう。コースは1周1100mだから、名古屋競馬場と同じサイズ。コースの内側に練習馬場も設けられている。

「今はあまり午後に馬場入りする馬はいませんね。ちょっと前までは、午後になると鞍を持った人でロンギ場を取り合いするくらいだったんですけれど」

弥富トレセンの坂路

弥富トレセンの坂路

馬場の隣の厩舎地区

馬場の隣の厩舎地区

 ちなみにここ最近は、牧場から直送されてくる1歳馬や2歳馬がほとんどいなくなったとのこと。個人的に北海道の牧場取材をしていて、多くの育成場にいるのはJRAか南関東に行く予定の馬ばかりということを以前から不思議に感じていた。はたして南関以外の地方競馬デビューの馬はちゃんと育成されているのだろうか。地方競馬には「馬を育てる」スキルがある人が多いのだし、馬を育てられる施設だってあるのだから、若駒の育成場として見直されてもよいのではないだろうか。

 そして弥富トレセンには坂路もある。建設残土を受け入れて作られたものと聞いた覚えがあるが、登りの長さは100m程度。高低差も見たところ2m程度だから、JRAの栗東・美浦の坂路と比べると規模は小さい。最近は使う人が減ったらしいが、でもこの坂路がヨシノイチバンボシやゴールドプルーフなどの活躍馬につながったのかも?

 馬場のとなりには厩舎地区が。ミニサイズのウォーキングマシンがある厩舎や、サンシャインパドックを備えている厩舎もあって、環境的にはなかなかのもの。ちなみにこの写真の右奥に見える白いビルは現在、使用されていないらしい。そのとなりは調整ルーム。かなり大きいんですけど……

サンアール弥富

サンアール弥富

 愛知所属馬が日常を過ごす場所を見学したあとは、すぐ横にある場外発売所「サンアール弥富」にレッツゴー。この日は笠松競馬の開催日。まだ11時前だから第1レースに間に合うな。さすがにガラガラだろうけど……

と思いながら突撃してみれば、場内には40人ほどのお客さんが!地図で確認していただければわかるのだけれど、ここの周辺にはトレセン住宅以外の住宅はほとんどなくて、公共交通機関だって弥富市が運行している1日数本のコミュニティーバスだけという、ハッキリ言って超へんぴな場所なわけですよ。それなのにこんなにたくさんの人がド平日の午前中から来ているとは!

 場外発売所の近くにある程度の人口があれば、立地などはあまり関係ないということに気づかされた感じがした。逆に、都市の近くで大駐車場があれば、場外発売所は成り立つってことなのかも!?

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グリーンチャンネル・中央競馬中継キャスターを経て、4月からは同じくグリーンチャンネルの新番組「競馬ワンダラー」の案内人を務める。そのほかにも生産牧場や育成牧場の取材、執筆、各地の競走馬セリ市の進行役も。3月には単行本「廃競馬場巡礼」を上梓。競馬のよき語り部としての研鑽を積んでいる。

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