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高知競馬場

  • 2012年03月21日(水) 18時00分
 高知に突撃するのは昨年1月の「全日本新人王争覇」のとき以来。土佐の高知での競馬開催は、よさ恋ナイターかよさ恋薄暮(これは私が勝手に名づけた)なので、高知市内に泊まったら午前中は時間がある。ということで、昨年と同じく競馬場に突撃する前に土佐黒潮牧場を訪問することにした。

 ここは高知駅前から車で約40分。公共交通機関だと宇佐行きのバスに終点まで乗って、そこから徒歩で1時間半くらいという場所にある。要するにド田舎なのである。

「この間、ヘッドライナー(CBC賞優勝馬)がきたんですけれど、馬運車を降りたら『へえ、ここなら安心できそうだなあ』みたいな顔をして、厩舎までスンナリ歩いてきましたね。それを知った厩務員さんから電話がかかってきましたよ。『あの馬が、頭絡をつかむだけで曳っ張れたんですか!?』って」

リバーセキトバもいます

リバーセキトバもいます

 入江の奥にあるこの牧場は、風が海を吹き抜けてくるので夏でも扇風機いらずで涼しいとのこと。本当に空気がゆるやかで、馬にとっても人にとっても居心地のいい空間だ。さて今日は黒船賞の日なので、まずは第1回黒船賞の勝ち馬、リバーセキトバにあいさつしましょうか。

 現在22歳のリバーセキトバは、最近になって船ゆすりがクセになったよう。右に左に体重を移動して落ち着かないが、毎日毎日ヒマでヒマでしょうがないんだろうからなあ。これが今の彼のリズムなら、無理にやめさせる必要はないかな。

 その向かいの放牧地はエイシンガイモン(96年関屋記念など重賞3勝)の領地。こちらもヒマそうにボケーとたたずんでいたが、私がふと横を向いたスキに、いきなり顔を噛みにきた!

 馬の鼻先と歯が耳の骨に当たった感じで、耳たぶを噛みちぎられなかったのはラッキーだったかも(汗)。どうやらエイシンガイモンは人間を威嚇する性質らしい。しかし、やりやがったなコノヤロウ。ビシッとシバいたるぞ覚悟しろ! と気合を入れて睨み返すと、再び耳を絞って歯をむき出しにしてきた。ダメだこりゃ。矯正不可能。金輪際、エイシンガイモンに近づくのはやめよーっと。ニンジンとか差し入れを持ってきてもアンタにはひとカケラもやらんでぇ!!

攻撃により耳を負傷!

攻撃により耳を負傷!

 しかしやられたなあ。顔にドロがついたじゃないか……と思いつつ攻撃された場所を触ってみれば、おお、血が出ているではないですか。

「私も噛まれて、親指の先が欠けたことがありますよ」と、牧場主の濱脇敏弘さん。そうか、エイシンガイモンは肉食獣だったのか。ということは、ヤツがどこまで本気で噛もうとしていたのかは不明だけれど、私の耳がシャレにならん状態になった可能性は相当にあったわけか……。

 でも、牧場は全体的にのんびりムード。ここにはJBCクラシックで09年(名古屋)2着、11年(船橋)3着のアドマイヤスバルも繋養されている。重賞タイトルは白山大賞典ひとつだけれど、長く一線級で活躍したよなあ。その隣には、08年の佐賀記念を制したチャンストウライも。中央地方で活躍した名馬の姿を拝んで、さあ、高知競馬場に突撃!

 この日は黒船賞デーということで、場内はかなりの賑わい。黒船賞のパドックも満杯のお客さんに囲まれた。そして黒船賞の終了後には、高知競馬名物のモチ撒きイベント!


モチ撒きで、大盛り上がり

モチ撒きで、大盛り上がり

 いつもながら、このイベントは盛り上がる。事故防止のために子供用のエリアが設けられているという配慮もある。関東の某競馬場で節分の日に「豆まきイベント」を提案してダメと言われたことがある私だが(最終的に豆を手渡しにすることで決行)、絶対に撒き系のイベントは盛り上がるって!

 しかしこの日の非日常的な盛り上がりはそこまで。黒船賞が終了した第6レース後はみるみる人が少なくなり、あっという間にいつもの高知競馬場の姿に戻ってしまった。うーむ、これなら薄暮ではなく昼間の開催にしたほうがいいんじゃないか?

 と思ったのだが、売り上げの詳細を聞いて納得。黒船賞の発売額は目標を大きく下回ったものの、それ以降の売り上げが予想以上に多く、1日トータルでの売り上げ目標はクリアできたということなのだ。つまり、昼間の浦和競馬が終了してからの馬券需要を高知が一手に引き受けたということ。通年開催のよさ恋ナイターは、薄暮開催でもその威力がやっぱりスゴイのだ。

 廃止の危機にさらされていた時にナイター設備を導入するという決断をした高知県競馬組合に拍手!

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グリーンチャンネル・中央競馬中継キャスターを経て、4月からは同じくグリーンチャンネルの新番組「競馬ワンダラー」の案内人を務める。そのほかにも生産牧場や育成牧場の取材、執筆、各地の競走馬セリ市の進行役も。3月には単行本「廃競馬場巡礼」を上梓。競馬のよき語り部としての研鑽を積んでいる。

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