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福山競馬場

  • 2012年04月04日(水) 18時00分
 福山競馬場がピンチ。騎手の数が不足ぎみなのである。現在、福山競馬場に所属している騎手は15名だが、野田誠騎手がソウル競馬場、楢崎功祐騎手が釜山慶南競馬場に遠征中となっているので、4月1日時点では13名。5月末までの予定で兵庫所属の山崎雅由騎手が期間限定騎乗で来ているので、通常の場合にレース騎乗できるのは14名となっている。

 福山競馬はフルゲートが10頭だから、10頭立ての場合は騎乗していない騎手が4人だけ。仮に12レースすべてが10頭立てだった場合、120÷14=8.57……。つまり、最低でも1人あたり平均で8鞍乗らなければ競馬開催が成り立たなくなってしまうのだ。

騎手の応援幕が並ぶ

騎手の応援幕が並ぶ

 しかし今は在籍馬の数が以前より減少しているので、10頭立てのレースはそれほど多くない。とはいっても、昨年度の最終開催日である3月25日には、リーディングジョッキー三村展久騎手は10鞍に騎乗していた。JRAでは12鞍すべてに乗る騎手も見受けられるが、地方競馬の場合は大半の馬の装鞍をして、レースではパドックから乗り始めるということを考慮すれば、JRAの全レース騎乗に匹敵するものがあるだろう。

 JRAの某騎手から聞いた話では、過密騎乗のスケジュールだと足の感覚がだんだんなくなってくるらしい。疲れがたまれば事故につながる確率も高くなる。そういったことを含めて、福山競馬が心配になっているのである。

 最近、高知競馬でもそういうことがあった。高知競馬に所属する複数の騎手がケガで戦線を離脱して、そこに加えて騎乗停止になった騎手が発生。フルゲート12頭の高知競馬は完全に騎手不足になってしまったのだ。そのときは「応援騎乗」ということで他の競馬場から騎手を招聘。「騎手不足」という事態は「中四国連携競馬」の目下の課題となっているのである。

 でも、競馬の開催ならば騎手が遠征すれば解決できるから、まだなんとかなる。それより大きな問題は、日常の調教なのである。福山所属の某騎手によると、1日あたりに稽古をつけるのは15〜20頭。午前2時すぎから9時頃までほとんど乗りっぱなしという人も多いらしい。もちろん、開催日にも調教があるから……。

「短期でもいいから、福山に騎手が来てほしいですね」とは、競馬主催者からの声。4月からはMr.PINK☆内田利雄騎手が参戦する予定だし、日本一の小回り競馬場で実戦を通して磨ける騎乗技術にはかなりのものがありそう。全国の若手騎手のみなさん、福山で修業するというのはいかがですか!!

サラ系の星、クーヨシン(提供:福山市競馬事務局)

サラ系の星、クーヨシン(提供:福山市競馬事務局)

 その福山競馬場で注目を集めている馬といえば、13歳のモナクカバキチと3歳のクーヨシン。どちらもアラブの血をもつ馬だ。

 モナクカバキチは3月25日のレースで惜しくも2着となって通算勝利数は54のままだが、平地競馬の最多勝記録を更新する時は近づいている。クーヨシンは母が福山で重賞を6勝したラピッドリーラン。父はスターリングローズだが、馬の種別的には「サラ系」だ。アラブのDNAが話題の中核になっているというのは、福山ならではの地域性といってもいいだろう。

 福山競馬場に来場するファンは、本当に熱い人が多い。そしてよく馬券を買う。だからファンの目も肥えている。かつては全国各地にあった「市営競馬」も、今は福山が唯一の存在となってしまった。広島県の東側、岡山県との県境に接する福山市は人口が約45万人。遠方のみなさんもネット投票のみならず、ぜひ「旅打ち」で突撃を!

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グリーンチャンネル・中央競馬中継キャスターを経て、4月からは同じくグリーンチャンネルの新番組「競馬ワンダラー」の案内人を務める。そのほかにも生産牧場や育成牧場の取材、執筆、各地の競走馬セリ市の進行役も。3月には単行本「廃競馬場巡礼」を上梓。競馬のよき語り部としての研鑽を積んでいる。

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