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ラブミーチャン復帰

  • 2012年05月09日(水) 18時00分
 個人的な話だが、私はラブミーチャンのファン。2009年11月23日に兵庫ジュニアグランプリでの勝利を目の前で見た、あのときから「いちばん応援したい現役競走馬」として、心のなかにインプットされてしまったのである。

 その想いは全日本2歳優駿でさらに強固なものになり、3歳時もゴールドジュニア、阪神競馬場でのフィリーズレビューまで4戦連続で現地に突撃。改めてカウントしてみると、ラブミーチャンが走った22戦のうち現地で見たのは11回。しかもそのうち8回が東海、関西地区なのだから我ながら恐れ入る。あたしゃ幸せ者ですわ……。


ラブミーチャン

ラブミーチャン

しかしラブミーチャンとしては、ダートグレードレースでの勝利は2009年12月からごぶさた。昨年末の兵庫ゴールドトロフィーでは8着と大敗してしまい、柳江仁調教師は「立て直します」と言い残して園田競馬場を後にしていた。

 あれからおよそ4か月。戦線を離れたラブミーチャンは、決して休養しているわけではなかった。笠松からそれほど遠くないところにある育成場で、来る日も来る日も急勾配を登って体を鍛えていたのである。ラブミーチャンは2歳の夏にJRA栗東に入厩し、「腰がゆるくて坂路を登れない」という要因もあって笠松デビューになった馬。それが坂路でビシバシ走れるようになるなんて……(涙)。

 となると、今年のかきつばた記念にはどんな姿で出てくるのだろうか。昨年は裂蹄での休養があっての復帰戦だった。当然、昨年以上の状態のはず!

 さっそくパドックに突撃して馬体重をチェックすると、マイナス1kgという表示。続いて馬体に目を移せば、昨年とは歩き方が変わっているような気がした。以前は腰を左右に振って後肢を踏み込ませる感じだったが、今回は左右のブレが少ない直線的な歩き方をしているように見えたのだ。これが坂路調教の効果なのか? 擬態語で表せば「のっしのっし」から「グイッ、グイッ」に変化したというイメージ。さあ、いったいどんな走りをみせてくれるのだろうか?

 ラブミーチャンのゲート番号は11番。外枠でも濱口楠彦騎手は先手を取りに行ったが、さすがにジーエスライカーとエーシンクールディはダッシュが鋭く、ラブミーチャンは3番手で1コーナーと2コーナーを通過。そして3コーナー手前で濱口騎手がGOサインを出して先頭に立つと、場内の空気は一気に熱狂へと変わっていった。4コーナーあたりでは「ラブミーチャンがんばれ!」という野太い声がゴール前周辺から複数。よおし、そのまま押し切ってしまえ!

 しかしそううまくいかないのが競馬。直線半ばで目下絶好調のセイクリムズンが先頭に代わって完勝し、ハイペース大歓迎のダイショウジェットが2着。ラブミーチャンは昨年と同じ3着という結果だった。
「まだちょっともの足りないんですよねえ」

 と、首をかしげる柳江調教師。濱口騎手も「何でかなあ……」という表情で検量室に入っていった。その後に詳しい話を聞かせていただくと、

「スタートがいまひとつでしたよね。もっとダーっと行けるはずなんだけど。でも3番手になったので砂をかぶらせて、それでどんなもんかなと思ったら、全然ひるまないで進んでいったものね。まだ闘争心はなくなっていないですよ」と、前向きに締めてくれた。


セイクリムズン

セイクリムズン

勝ったセイクリムズンは、かきつばた記念を連覇。昨年はこのレースのあとに休養したが、今年は実戦を重ねていくらしい。ラブミーチャンにとってはスーニに続く強敵だが、なんとか再びダートグレードレースの肩掛けを……!!

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グリーンチャンネル・中央競馬中継キャスターを経て、4月からは同じくグリーンチャンネルの新番組「競馬ワンダラー」の案内人を務める。そのほかにも生産牧場や育成牧場の取材、執筆、各地の競走馬セリ市の進行役も。3月には単行本「廃競馬場巡礼」を上梓。競馬のよき語り部としての研鑽を積んでいる。

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