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ダート界を代表するチャンピオンに/ジャパンダートダービー

  • 2015年07月09日(木) 18時00分


ジャパンダートダービーの重要性

 3歳馬のダート部門の「グレード競走」は、思われているよりはるかに少ない。

▽5月…兵庫チャンピオンシップ ダート1870m(Jpnll)
▽6月…関東オークス ダート2100m(Jpnll)
▽6月…ユニコーンステークス ダート1600m(Glll)
▽7月…ジャパンダートダービー ダート2000m(Jpnl)
▽8月…レパードステークス ダート1800m(Glll)
 以上の「5競走」だけである。

 ダート巧者の場合、頭角を現したあと、全日本級のトップホースに成長し、全国に名前が知られるようになるのは、(体系も関係し)芝のレースより遅いのは確かである。3歳秋あたりから、やがて「4歳、5歳、6歳→」とチャンピオンロードが展開する体系になっている。

 したがって、全国各地のダービーも、3歳馬の春の頂点というよりは「地域の新人王決定戦」の趣があり、主要路線の出発点にすぎないイメージは否定できないが、中には完成度の高い若いチャンピオンも存在するのも事実である。

 「ジャパンダートダービー」の占める重要度は、実際に考えられているよりはるかに大きい。JRAにはダートダービーに相当するレースはない。文字通り、日本の「ダートのダービー」がこのレースである。諸事情が重なり、1999年の第1回には6500万だった1着賞金は、現在は4500万円にとどまっているが、レースレベルをさらに一段と高めることで注目度を上げたい。

 注目のビッグレースに育てることで、売り上げを伸ばし、レースの重要度に見合う高額賞金のレースに巻き返したい。賞金がアップすれば、1−2着馬は秋には古馬のエース級と対戦できることにもなる。ゴールドアリュール、カネヒキリ、フリオーソ……など、歴史的なチャンピオンが全国区に羽ばたいたのがこのレースであり、スマートファルコン、ナイキアディライト、ボンネビルレコード、サクセスブロッケン、テスタマッタなど、このレースを契機に名を知られるようになった名馬は数え切れないほど存在する。

秘めるパワーは驚異的

 圧勝したのは、2番人気のノンコノユメ(父トワイニング)だった。最初、名前からくるイメージだけでなく、レース運びもまるで牝馬のように繊細で、鋭さだけを前面に出したダート巧者だった。5月の「青竜S」東京ダート1600mを快勝した際など、軽いダートで流れがスローだったから、後方から楽々と差し切ったノンコノユメの上がり3ハロンは、34秒7である。

 つづく「ユニコーンS」を、2番人気で大外から鮮やかに差し切り勝ちして、初重賞制覇。ドバイ帰りの1番人気馬ゴールデンバローズなどを問題にせず、迫力の追い込みを決めたレースで、「えっ、ノンコノユメって男馬だったんだ」。初めて気がついたファンがいっぱいいる。もちろん、関係者の中にも存在した。

 父トワイニング(その父フォーティナイナー)は、今年6月28日、残念ながら24歳で死亡したが、1度は帰国したりしながら、日本で合計14世代の産駒を送った渋い種牡馬だった。

 ワンダーアキュート(現9歳)の父種牡馬カリズマティックもそうだったが、海外の産駒も含め、トワイニングの送ったGI勝ち馬はこのノンコノユメが最初である。日本のダートグレード競走のもつ重要性が、改めて世界でも示されたように思えた。

 ノンコノユメの祖母レディタイクーン(1994年。父クリミナルタイプ)は、新潟記念などを制したアイリッシュダンス(1990年。父トニービン)の4歳下の半妹。したがって、大活躍中の種牡馬ハーツクライ(父サンデーサイレンス)と、ノンコノユメの母ノンコ(父アグネスタキオン、その父サンデーサイレンス)は、ほとんど同じような血を持つ「いとこ同士」になる。ファミリーの活力とパワーを生かし、前出のジャパンダートダービーから育った全日本のダート界を代表するチャンピオン級に育ってもらおう。

 大井の水の浮いた不良馬場を、3コーナーあたりではとても今回は届きそうもない手ごたえなのに、直線、ただ1頭だけ上がり「37秒3」。追って猛然と伸びたノンコノユメの秘めるパワーは驚異的である。本物のダートチャンピオンだろう。まだ牝馬だと思っているファンに、これからは古馬のビッグレースの主役となることで、ちゃんと認知してもらわないといけない。

 マイペースに持ち込み、4コーナーを回ったあたりでは確勝とみえたクロスクリーガー(この馬の父アドマイヤオーラも今春3月に事故死)は、バテたわけではなく自身の前後半は「63秒0−63秒1」=2分06秒1。不良馬場のなか、完ぺきなバランスである。陣営も「相手が強すぎた」と認めるしかなかった。

 東京ダービーの勝ち馬ラッキープリンス(父サイレントディール)は、果敢に先行し4コーナーでは2番手に上がって場内を沸かせたが、最後は少し鈍って3着。馬場差はあるだろうが、今回の時計は2分07秒1(不良馬場)。東京ダービーの2分07秒5(稍重馬場)を短縮してみせた。この馬、気がつけばいつも人気以上に走っているから素晴らしい。父母両系ともにタフな成長力が真価である。



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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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