◆“カナロア世代”か、新興勢力か
ロードカナロアの引退以降、乱戦模様が続いて久しいスプリント路線。今週の高松宮記念も主役不在の激戦が予想され、多くのファンがどの馬から入るべきか頭を悩ませていることだろう。おそらくこの戦国時代、カナロア2世がデビューする来春まで続くというのが個人的見解だが…。そんな無敵を誇った“世界のカナロア”の偉大さを身をもって実感したのが、実は昨年のスプリンターズSだった。
「カナロアと戦った当時に比べたら、メンバーはずいぶん楽になっている」
尾関知人調教師のこの言葉通り、波乱を演出したのは13年高松宮記念の4着馬(ロードカナロアと0秒3差)サクラゴスペル(15年スプリンターズS2着=11番人気)。肉体的にピークであろう5歳時にGIで掲示板が精一杯だった馬が、7歳にして勝ち負けを演じるのだから当時とのレベル差は歴然。「1週前に坂路で一番時計(4ハロン52.9秒)をマークしたように馬はまだ元気いっぱい。海外遠征(香港スプリント12着)を経験したことで、むしろ精神的にはまた成長した印象を受ける」(尾関師)とあれば、今週のGIも同馬、そして昨年2着ハクサンムーンを含めた“カナロア世代”は要警戒となろうか。
それでも…。「そろそろ世代交代があるのでは」という思いも同時に胸に湧いてくる。昨年スプリンターズS優勝馬ストレイトガールのマイル転向に加えて、昨年覇者エアロヴェロシティが直前の出走回避。これは短距離路線が過渡期である裏返しであり、状況はいかにもニューヒーローを待ち望むようでもある。
戦歴で見れば阪急杯を制したミッキーアイル(過去スプリントGIで3,4,7着)や、オーシャンSを快勝したエイシンブルズアイがその筆頭候補か。ともにサラブレッドとして最も脂が乗る5歳馬であり、大きな飛躍を遂げて不思議ない。しかし当方が気になって仕方ないのは、オーシャンSを出遅れて5着に終わったアルビアーノだ。
「最後はスペースがなくて…スムーズならたぶん勝っていた」と鞍上ルメールが語ったように、4角は発馬の不利を感じさせない抜群の手応えだった。何より「直線に向いても走り自体はパワフルだった」という名手の言葉が、力を要する中京芝との好相性を嫌でも予感させる。本命を打つべきは“カナロア世代”か、新興勢力か。確定までの限られた時間でじっくり考えたい。(美浦の宴会野郎・山村隆司)