▲内ラチに突っ込むアクシデント…当時の状況について伺います (撮影:高橋正和)
今回のテーマは直近の話題をお届けする「月刊 川田将雅」。先週の日曜日にはスプリンターズSが行われ(川田騎手はダノンスマッシュに騎乗)、秋のGIシーズンの幕開けとなりました。
一方、その前日の中京で、大きなアクシデントがありました。先頭を走っていた川田騎手騎乗のグレートキャンベラ(2歳新馬)が、突然直線で内ラチに突っ込み、ラチは大破。大変心配されるシーンではありましたが、幸いなことに人馬共にほぼ無傷で済むことができました。
ほんの数秒の間に、人馬の安全と後続への影響まですべてを判断した川田騎手。その超絶した危機回避術と、この事象の原因を考察します。
(取材・構成=不破由妃子)
中京競馬場の構造が影響している可能性も
──先週は、土曜日の5R(メイクデビュー中京・グレートキャンベラ)で落馬のアクシデントがありました。次のレースに騎乗されていたので安心しましたが、痛みなど残っていませんか?
川田 レース中のあれだけの事故ですからね、もちろん痛いところがひとつもないってことはないです。でも、乗り替わらないといけないような状況ではなかったし、よくこれで済んだなと思います。その後の依頼にご迷惑をお掛けしないで本当によかった。馬も軽傷で済んでくれたのがなによりです。
──ラチに飛び込むようなかたちになったわけですが、どういう状況だったのでしょうか。
川田 返し馬もレース中も、ずっと右に逃げながら走っていたんです。レース中は外に飛んで行かないように気をつけて乗っていたくらいなんですが、あの瞬間、急に手前を替えて、確実に行く気で内に飛んで行きました。
──右ムチに驚いたとか?
川田 新馬ですし、ポンと触る程度にしかムチを入れていないので、ムチにビックリして…というのは、あの行き方では考えづらいです。右ムチを嫌がっての行動だとしたら、体を左に逃がしながら、顔は右に向いて…という体勢になるはずなんですよ。でも、あの馬の場合、しっかり左を向いて、そのまま左に飛び込んで行ったので。
──確かに、一発目のムチでは、まったく嫌がる素振りを見せていませんものね。
川田 2発目を入れたあとに、手前を変えてラチに向かったので、「あ、これはまずい」と思ってすぐに手綱を持ち直したんですけど、馬は行く気になっているのでコントロールが効きませんでした。ああなったらもう回避はできず、確実に相当な勢いで内ラチと接触するので、あとはどのタイミングで落ちるかを考えて。ラチの内側に落ちるのか、馬場側に落ちるのか、どっち側に落ちるのが一番ケガをしないで済むか。
──ほんの2、3秒の間にそこまで考えたわけですか。