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新チャンピオン誕生を称えたい/東京大賞典

  • 2015年12月30日(水) 18時00分


東京大賞典と有馬記念は最初からセットで並んで育ってきた


 1995年。中央・地方全国交流レースとなった東京大賞典は、1997年のダート競走格付け委員会で「統一G1」に格付けされた。2007年にパート1国となると表記のややこしい期間はあったが、2011年からは晴れて「国際G1競走」となった。

 レースの重要度は、最終的には出走馬のレベルによるものであり、東京大賞典は日本のダート競走の1年をしめくくる総決算のレースとして、チャンピオンホースの大目標のレースとなった1995年当時から、国際G1級の中身を備えていた。

 いや、東京大賞典の高いレベルの歴史はもっと古い。1976年、当時ダート3000mのこのレースを圧勝した3歳ファインポート(父シプリアニ)の3分08秒6は、その年のグリーングラスの菊花賞3000m3分09秒9(芝重)を上回っている。1960年、このレースの前身「秋の鞍」を勝ったオンスロート(父カネリュー)はやがて中央に転じ、天皇賞(春)、有馬記念を勝った。有馬記念というなら、今年の有馬記念馬ゴールドアクターの4代母トサクイン(父トサミドリ)は、1966年の東京大賞典を勝ったゴウカイオー(のちにゴウカイ。父ヒンドスタン)の1つ下の妹である。

 東京大賞典は、1955年のスタートで(当初のレース名は秋の鞍)、今年61回目。有馬記念は翌年が第1回で今年第60回。最初からセットで並んで育ってきた。

 全国規模のレースとなった最初の1995年の出走馬から、翌1996年に創設された第1回「ドバイワールドC」に挑戦したライブリマウントが出現している。

 ここまでに、「東京大賞典、ドバイワールドC」の両レースに出走した日本を代表するダート界のエースは、そのライブリマウントを筆頭に、キョウトシチー、ワールドクリーク、レギュラーメンバー、サイレントディール、リージェントブラフ、アジュディミツオー、カネヒキリ、ヴァーミリアン、トランセンド、スマートファルコン、ホッコータルマエ…。計12頭もの日本国内にとどまらない活躍馬が並んでいる。

 ハイレベルの好カードとなった今年、大井競馬場の入場者数は3万4076人に達し、東京大賞典の売り上げは27億4963万900円。前年比20.2%増。地方競馬の1レースあたりの売上レコードを更新し、当日の売得金額約48億5千万強も地方競馬の1日あたり歴代1位の記録だった。

チャンピオンは、次代のチャンピオンに倒される運命にある



 このG1を2連勝し、2年連続ドバイワールドCに挑戦している昨2014年のJRA最優秀ダートホース6歳ホッコータルマエ(父キングカメハメハ)には、史上初のG1格10勝目の大記録がかかっていた。11月に同じ大井2000mのJBCクラシックで、5歳コパノリッキー(前年の東京大賞典2着馬)に鮮やかな逃げ切りを決められたホッコータルマエは、ここまでコパノリッキーとは対戦成績3勝3敗。コパノリッキーを倒してチャンピオンの座を守るには、ライバルを自力でつぶす必要があった。

 JBCクラシックと同じように、ゆっくりハナを切ろうとしたコパノリッキーにホッコータルマエは最初からプレッシャーをかけ、離れずピタッとマークする手に出ている。JBCクラシックのレース全体のバランスは「前半62秒7-後半61秒7」=2分04秒4。ところが今回は「前半61秒3-後半61秒7」=2分03秒0。全体時計が速いだけでなく、中間の1000m通過が「1秒4」も速い。

 10勝もしながら2着、3着の少ないコパノリッキーは、自分のペースに持ち込めないとちょっとモロい。直線に向き、たちまち先頭に躍り出たホッコータルマエに、東京大賞典3連覇の偉業がみえたと映ったのは一瞬、人気の2頭に食らいつくように差を詰めていた5歳サウンドトゥルー(父フレンチデピュティ)のストライドが光っていた。

 チャンピオンとなるには、チャンピオンを倒さなくてはならない。立場を変えていうと、「チャンピオンは、次代のチャンピオンに倒される運命にある」

 ホッコータルマエにも、コパノリッキーにとっても厳しいレースだった。だが、サウンドトゥルー以下は、2頭を倒すために出走していたのである。1年の総決算にあたるダートG1の東京大賞典で、展開の有利不利を言っては自身のプライドに傷がつく。

 来季は7歳になるホッコータルマエも、6歳のコパノリッキーも、まだまだダート界のエース格の座は簡単には譲らない。だが、コパノリッキーと同期のサウンドトゥルーは、少し遅れて出世してきた急上昇のオープン馬。この夏以降、エース級相手に【3-1-1-0】。勝負強さを前面に出し、G1格のビッグレース「2着、3着、1着」。一気にトップに並んできたのである。

 クロフネを送るフレンチデピュティ(父デピュティミニスター)を父に、母の父は2007年の東京大賞典の勝ち馬カネヒキリなどを送り、一時代を築いたフジキセキ。近いところに活躍馬こそいないが、4代母キョウエイオリーブ(輸入牝馬)の父は、1974年の米2冠馬リトルカレント(その父シーバード)。ファミリーの代表馬は、1951年のケンタッキーダービーを制したカウントターフ(父カウントフリート)であり、サウンドトゥルーは典型的なアメリカ血統がベース。新チャンピオン誕生を称えたい。

 と同時に、ここが引退レースとなった9歳ワンダーアキュート(父カリズマティック)の闘志の3着は絶賛したい。1999年の米3冠「1着、1着、3着」のカリズマティック産駒で、G1を制したのは世界でこの馬だけである。貴重な後継種牡馬となることが決まっている。



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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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