▲「良くも悪くも、1年目のほうが、思い切った騎乗ができていたかもしれないなぁと思うことがあります」
大反響! 藤田菜七子騎手・独占インタビューの第2話を公開。今回は「今思い出しても、あのレースは気持ちがよかった」と語る、自身の快心の騎乗から、今年から取り入れたという新トレーニングで得た心の変化、そしてデビュー2年目を迎えた今だからこそ見える課題などを赤裸々に明かしてくれました。
(取材・文/森カオル)
「“変わったね”と言っていただけるのはすごくうれしい」
──1年目と2年目の菜七子ジョッキーの変化に注目していきたいんですが、今年の勝利を振り返ると、昨年同様、胸のすくような後方一気もありますが、それ以上に逃げ切るケースが増えましたよね(昨年逃げ切り0勝に対し、今年はここまでで7勝)。
菜七子 そうですね。意識的に出していく競馬が増えているとは思います。もちろん1頭1頭違うので、あるときは後方でジックリ脚をタメて……。
──ドリームリヴァール(4月8日・福島6R)のように、直線だけで“ズドン!”というケースも。
菜七子 あ、はい(笑)。あのレースは、乗っていてすごく楽しかったです!一番後ろから全部の馬をかわして…なんて、なかなかないですからね。ただ、あのときは「まとめてかわせるな」と思えるだけの手応えがありました。最後も1頭離れていましたが(2着ミュゼリバイアサン)、届くだろうなって。今思い出しても、あのレースは気持ちがよかったですね。
──ゲートを意識的に出していく競馬が増えたとのことですが、出していって、その位置で折り合わせて…というのは、見た目以上に高度な技術が必要だとか。
菜七子 そうですね。出していくということは、そのぶん折り合いが付かなくなってしまったり、人気馬の場合、目標にされてしまう可能性もありますから、リスクは大きいんですけどね。
──でも、そこは恐れずに。
菜七子 はい。やっぱり減量があるうちは前に行ったほうが有利だと周りからも言われますし、私自身も、もっと積極的に行ったほうがいいんだなと、今年になってからより感じるようになって。それからですね、意識的に出していく競馬が増えたのは。
▲「今年になってもっと積極的に行ったほうがいいんだなと、より感じるようになって」(写真は鮮やかに逃げ切った2017年10月7日東京8R(C)netkeiba.com)
──あと、個人的に昨年とは明らかに違うなと思うのが、重心の位置。それによって、騎乗フォームが目に見えて変わったような気がします。
菜七子 ホントですか!? ありがとうございます! 去年までは、競馬学校で教えてもらったトレーニングを自分ひとりでやっていたんですが、今年に入ってすぐにトレーナーを付けたんです。
──そうだったんですね。それは大きな変化かも。
菜七子 はい。一人でやっていたときとはまったく違うトレーニングができていますし、あとは先輩方にもたくさん競馬を教えてもらっているので、こうやって「変わったね」と言っていただけるのはすごくうれしいです。
──ご自身でも変化を実感できていますか?
菜七子 ん〜、どうでしょう(苦笑)。ただ、前よりは自信を持って乗れるようになったかなぁとは思いますけど。
──トレーニング方法を一新されたとのことですが、たしか運動はあまり好きではないとか…。
菜七子 馬に乗るのは大好きなんですけどね。正直、トレーニングとかはあまり…(苦笑)。でも、馬に乗っていると、フィジカル面で自分の足りないところにたくさん気づくんです。だから、ジョッキーである以上、やるしかない。そこは男女関係なく仕事ですからね。だから、これからも頑張ってやるしかないなと(苦笑)。
▲「正直、トレーニングとかはあまり…(苦笑)、でもジョッキーである以上、やるしかない。そこは男女関係なく仕事ですから」
──着々と前進するなかで、フィジカル面以外に新たに見えてきた課題などはありますか?
菜七子 1年目より競馬がわかるようになったぶん、ちょっと慎重になりすぎてしまったり、守りに入るような競馬をしてしまったり…。もしかしたら、そういうのがあるのかなって。1年目のほうが、思い切った騎乗ができていたかもしれないなぁと思うことがありますね。
──それは良くも悪くもですね。
菜七子 そうですね、本当に良くも悪くも。もっと積極的に、大胆な競馬ができればいいんですけど。ほかにも課題はたくさんありますが、とにかく最近は、以前にも増して“競馬”をよく見るようにしています。当たり前のことなんですが、ほかのジョッキーがどういうふうに競馬を組み立てているのか、前回自分が乗った馬に別の人が乗っている場合、どういう競馬をするのか、自分とは全然違う競馬をした結果、馬の走りはどう変化したのかなど、ものすごく意識して見ていますね。それが本当に勉強になっています。
(次回へつづく)