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普通ならクラシックに間に合う時期ではない、それでも「あえて」と思いたくなる/吉田竜作マル秘週報

  • 2016年01月14日(木) 18時00分


◆「体だけなら今の時点でもヒカリよりいいくらい」

 土曜(9日)京都芝内1600メートルの未勝利戦をレッドアヴァンセ(牝=父ディープインパクト、母エリモピクシー・音無)が快勝。デビュー2走ともに末脚を封じられるようなレースで不完全燃焼に終わっていたが、今回は4角で誰にも邪魔をされない大外をぶん回し、これまでの鬱憤を晴らすかのような末脚で初勝利を飾った。「この馬が今年の牝馬のエース」と言い続けてきた音無調教師にとっては、やっと“スタートラインに立った”というところだろう。

 ここから手堅く2勝目を狙いトライアルへ進むのか、一足飛びに桜花賞出走可能賞金を稼ぎに挑むのか。いずれにせよ時間がそれほどあるわけではないので、一度のミスが命取りとなりそうだ。

 近年は桜花賞へのボーダーラインが上がり、この時期に1勝馬という状況では厳しくなっている。それだけに、年明け入キュウ→デビューとなると桜花賞に限っては絶望的と言っていいかもしれない。しかし、それでも「あえて」と思いたくなる馬が先日栗東にやってきた。昨年暮れの香港カップを逃げ切って初GI制覇を果たしたエイシンヒカリの全妹エイシンティンクル(父ディープインパクト、母キャタリナ・坂口)だ。

「体だけなら今の時点でもヒカリよりいいくらい」と昨秋から高く評価していた坂口調教師だが、何といっても500キロ以上あろうかという巨漢。脚元を注意しつつ、巨体を支える体力や筋力をつけなくてはならないとあって、育成先の栄進牧場久世育成センターでも慎重に進められたようで、なかなか入キュウのゴーサインが出なかった。ただ、そうした“熟成”が功を奏したのだろう。7日の入キュウ後のトレーニングは思った以上に順調にいったようだ。

 実は記者はキュウ舎から馬場へと向かう同馬を追うように並走(人間はトレセン内で走ってはいけないため、もちろん徒歩で)した。この時は白目をむいたり、立ち上がって中村キュウ務員をてこずらせるしぐさも見せていた。「牝馬だし、ヒカリよりも難しいのかな」と感じたのだが、坂口助手がまたがり、馬場へと出ると一変。グッと頭を下げてハミを取ると、パートナーとスムーズに併走。ゆったりとしたキャンターでB(ダート)コースを1周して引き揚げてきた。

 大型馬特有の重さを感じさせない、見るからにバランスのいい走り。馬から下りた坂口助手もいつになく高い評価を口にした。「見た目にも…ヒカリはトモが寂しいようなところもあるんですが、この馬の方がトモがしっかりしているので乗っていてもバランスがいいですよ。あとは、柔らかい。まだビビっているのか物見はきつかったですが、このあたりは慣れていけば。いい馬ですよ。このまま無事にいってほしいですね」。坂口調教師は「ヒカリは入キュウしてデビューまで3か月くらいかかったが、こちらはカイバも食べるし、体もしっかりとしている。ゲートさえうまくいけばヒカリほど時間はかからないかもしれない」と好感触をつかんだようだ。

 普通ならクラシックに間に合う時期ではないが、幸か不幸か、今年の3歳牝馬勢は女王メジャーエンブレム以外ピリッとしない。スケールの大きな馬体、血統背景から勢力図をひっくり返す…そんな期待をしたくなる一頭だ。まずはゲート試験をうまくパスすることを祈りたい。

 最後に馬のために前記の「白目をむく」の表現を訂正したい。坂口助手によると「吉田さんの見た側(右)が白目がちなんですよ。逆からは、かわいい顔してますから。馬房でも人が来ると顔をのぞかせてくるし、人懐っこい」。パドックでは内側になるのでファンは大変だが、レース当日エイシンティンクルを写真に収める際には、ぜひ「かわいい」方から撮ってあげてほしい。

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