デビュー7戦目で、ついに加矢太騎手が初勝利! 「先を越されてしまった…」と嘆き節も飛び出した小牧騎手ですが、当日のエピソードからは、ゴールした瞬間の歓喜が手に取るように伝わってきます。
このほか、グレアミラージュのレース回顧、「映画化したいお手馬は?」というユーザー質問も。今回も人情味溢れる『太論』、どうぞお楽しみください! (取材・文:不破由妃子)
※このインタビューは電話取材で実施しました。
泣いた泣いた! あんなに興奮したのは久しぶりやったわ
──先週は、グレアミラージュが5着(4月23日・阪神8R・4歳上1勝クラス・10番人気5着)。前走とは違い、直線は最後までしぶとく脚を伸ばして。
小牧 頑張ったね。ただ、4コーナーでちょっと不利があってね。川須(テーオーターナー6着)が外に出てきたもんやから(笑)。まぁ制裁とかではないから、タイミングの問題やけど。
──坂井瑠星騎手とふたりで、だいぶ外を回るかたちになって。
小牧 うん。並んでいたところで、みんなが外に出したいタイミングが重なって、結果的に僕らふたりが不利を受けたっていう感じ。乗り掛かりそうになったから、あれはちょっと大きかったね。あれがなければ、もうちょっと際どかったと思う。
──小牧さんにしては珍しく、直線でムチをビッシリ入れてましたね。
小牧 そう。でもね、これ以上叩いたらアカンなと思って途中で止めたわ。最低でも権利(5着以内)だけは取りたくて、もう必死やったけど、ふと我に返った(苦笑)。だいぶよくなっているし、走るのは間違いないんやけどねぇ。流れひとつや。
──さて、先週はビッグニュースがありましたね。加矢太騎手が、障害初出走のヴァーダイトとのコンビで初勝利。おめでとうございます!
小牧 先を越されてしまったなぁ。でもまぁ、ホッとしたわ。もともと力のある馬に乗せてもらってね。加矢太も自信があったみたいやけど、なんせみなさんに感謝です。厩舎関係者はもちろん、クラブの関係者の方々、クラブの会員のみなさんにお礼を言いたいです。この場を借りて、みなさん本当にありがとうございました。
──小牧さんは、どこで観戦されていたんですか?
小牧 自宅のソファで、嫁さんとふたりで観てたわ。
──そうでしたか。ゴール前は、さぞかし大絶叫だったのでは?
小牧 いやいや、普通よ。至って冷静沈着よ(笑)。
──なんか嘘っぽい…。
小牧 ホンマはね、僕だけ大興奮やった(苦笑)。あんなに興奮したのは久しぶりやわ。
──もしかして、ちょっと泣いちゃったり!?
小牧 泣いた泣いた(笑)。嫁さんとふたりで「やったー!」言うてね。4時くらいやったかな、加矢太に「おめでとう。乾杯!」っていうLINEを送って、そこから僕ひとりで祝杯や。美味かったよ、酒が。いつも以上にね。
──ご家族でお祝いされたわけではないんですね。
小牧 本人は福島で乗っていたから、どうしても帰ってくるのが遅いやん。
──ああ、お父さん、主役を待てず(笑)。デビュー7戦目での初勝利となりましたが、小牧さんとしては、思ったより早かったという印象ですか?
小牧 そうやね。もうちょっと時間が掛かるかなぁと思っていたから。力のある馬に乗せてもらったおかげやね。
──ここまでの加矢太さんの騎乗ぶりについては、先輩ジョッキーとしてどう評価されてます?
小牧 いやぁ、すごいでしょ。何十年も乗ってきた人たちと一緒に戦っているわけやから。大変やと思うわ。加矢太に先に勝たれてしまったから、僕も頑張らんとね。
──では、最後に質問をひとつ。「映画好きな小牧騎手に質問です。園田時代も含め、今までコンビを組んだ馬のなかで、映画化したら絶対におもしろいと思う馬生を送った馬はいませんか? もしいたら教えてください!」。
小牧 そうやなぁ、ニホンカイユーノスとか。今はもうないけど、日本で一番小さい競馬場だった益田で連戦連勝していた馬でね。“益田の怪物”と言われて、鳴り物入りで園田に転籍してきたんやわ。園田にきてからは、僕と一緒に最後まで戦って。僕が30歳くらいのときやね。
──園田に転籍してからの12戦は、すべて小牧さんの手綱だったんですね(12戦7勝)。
小牧 うん。不思議なところがある馬でね。ものすごく強いのに、普通の競馬をしたら負けんねん。で、マクリの競馬をしたら勝つ。小回りの競馬場ならではやったかもしれんけど、おもしろい馬やったな。