荻野ジョッキーの初勝利は、デビューから1か月後の4月10日。15番人気のタガノインペーロでの勝利で、単勝4万3390円という超高配当。新人騎手の初勝利としては、史上最高配当でした。今週はこのビッグな勝利を振り返っていただきます。さらに「逃げ」で好走していることが多い荻野ジョッキーですが、「逃げ」へのこだわりはあるのでしょうか。また、自身が思う今の課題なども語っていただきました。
(取材・文/大薮喬介)
競っていた松田先輩がゴールしてすぐに「おめでとう」と
――小倉に移動してのデビュー2日目、最初のレースで5着でしたね。(※3月6日小倉3R・3歳未勝利 テーオーバーキン 5着)
荻野 自厩舎の馬だったのですが、小倉だったので早めに動いていきました。ただ、コーナリングや初歩的なミスなどがあって、今だったらもっと上手く乗れたと思います。
――少しフラフラする場面がありました。
荻野 操縦が安定していなかったですし、まだ馬を完全に御しきれていなくて…。周りの方々にも迷惑をかけてしまったので、早く技術を上達しなければと思いましたし、先輩たちとの差を痛感させられました。
――デビューから1か月後の4月10日に待望の初勝利を挙げましたね。15番人気のタガノインペーロに騎乗していて、単勝4万3390円という超高配当。新人騎手の初勝利としては、史上最高配当でした。
荻野 人気は気にしていませんでしたが、うれしかったです(笑)。馬が強かったですね。
――タガノインペーロには、攻め馬などで乗られていたんですか?
荻野 いえ、テン乗りでした。(タガノインペーロを管理する)五十嵐先生も「思い切って乗っていい」とおっしゃっていただけたので、積極的な騎乗をしようと思っていました。
――タガノインペーロはそれまで逃げたことがなかったんですよね。
荻野 はい。中団よりも前の競馬はありましたが、ハナを切ったことはありませんでしたね。ただ、僕は他の先輩よりも3キロ軽いですし、前々で競馬をしようと意識していました。
――スタートしてから出ムチを入れてましたよね。
荻野 松田先輩のザットイットが先頭にいて、1コーナーのあたりで隊列はほぼ決まっていたのですが、それでも僕はハナを切ることにこだわって乗りました。
――結果的に逃げ切ったわけですから、正解でしたね。
荻野 正直、勝ったことがなかったですし、逃げたのも1回しかなかったので、道中はこのペースでいいのかもわからなくて、後ろがどうなっているのかもわからなかったんです(苦笑)。脚音や気配は感じていたんですが、実際は馬が連れて行ってくれたという感じですね。並ばれても踏ん張ってくれて。
――直線で並ばれた時、もう一度差し返しましたよね。どのあたりで勝ったと思いました?
荻野 最後の1ハロンですね。ギアがもう一度入ってくれて、ひと踏ん張りしてくれた時に勝てると思いました。馬をそこまで仕上げてくださった関係者の方々に感謝です。
――ゴールした瞬間はいかがでしたか?
荻野 競っていた松田先輩がゴールしてすぐに「おめでとう」とおっしゃってくださったので、そこで実感がわいたんです。その後、電光掲示板を見て、自分が騎乗していた馬番が1番上に点滅していた時に、あらためてうれしさがこみ上げてきました。
――初勝利のインタビューでは、謝っていましたよね(笑)。
荻野 僕を買ってくださっていたファンの方は少なかったと思うので、謝っておこうかなと(苦笑)。
――その後も、穴人気で好走していますよね。
荻野 人気は気にしていないので(笑)。どちらかというと、人気馬で結果を出していないような気がするので、もっと頑張らないといけないと思っています。
――人気馬で結果を出せなかった時は悔しいですか?
荻野 人気云々ではなく、結果を出せない時はいつも申しわけないという気持ちになります。
――荻野騎手といえば、逃げて結果を出しているように思うのですが、「逃げ」にこだわりはありますか?
荻野 減量があるので、前々で競馬をすることはあります。今年の天皇賞・春で、武豊さんが逃げて勝ちましたよね(※キタサンブラックは荻野騎手の所属厩舎の馬)。あの絶妙の逃げ、本当に感激しました。それに比べたら、僕の逃げはまだまだです。だから、逃げが得意とはまったく思っていないんですよ。武豊さんのような、乗り方ができるように早くなりたいです。
――レースで一番難しいと思うことは何でしょうか?
荻野 折り合いとポジション取りです。勝っている先輩たちのレースを振り返ると、やはりいい位置にいますし、折り合っていますから。だから、先輩にアドバイスを聞きにいったり、レースを観たりして参考にさせていただいています。あとは、周囲をしっかりと見ることでしょうか。それは普段から意識するようにしています。
――初勝利の時はペースがよくわからなかったとおっしゃっていましたが、今はいかがですか?
荻野 どうなんでしょうね。ペースは感覚的なものなので、掴んでいるとも掴んでいないともいえないです(苦笑)。
――荻野ジョッキーが逃げて好走している時は引き離さず、追い出しも我慢していることが多いので、ペースを掴めているように見えます。競馬学校時代に1ハロンごとの時計を把握する練習をすると聞いたことがあるのですが、得意だったのでは?
荻野 得意ではなかったですね。ただ、最後の試験の時はドンピシャだったみたいです。どちらかというと(藤田)菜七子や他の同期たちのほうが正確だったんじゃないですかね。
――そうなんですか。おいでおいでの競馬もしていることもありますし、ペースを読み切っているように見えますけど。
荻野 ありがとうございます(笑)。でも、まだまだです。それだけ手応えに余裕のある、いい馬に乗せていただいているということですし、直線で待っていても後続が迫ってきたら、いきなり全力で追い出したりすることもありますからね。
――そこが今の課題ですか?
荻野 たくさんありますけど、課題のひとつではあります。清水先生からも言われていることですが、あせらずに徐々にギアを上げていくこともしないといけないですよね。とにかく周りの方々が「いいレースをしたな」と思われるようなレースをしたいです。そのために「いいスタート」、「いい位置取り」、「いいタイミングでの追い出し」を心がけるようにしています。今思い返せば、こう乗っていたら勝っていたなというレースもたくさんあるので、もっと腕を磨いて、ミスの少ないレースをしていきたいです。
もっと腕を磨いて、ミスの少ないレースをしていきたいです
【次回のキシュトーークU25は!?】
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